2013年10月21日(月)
主張
賃上げ対策
首相の答弁に何の保障もない
安倍晋三首相は国会の所信表明演説や代表質問にたいする答弁で「企業収益の拡大を賃金上昇や雇用拡大につなげていく好循環を全力で実現してまいります」と何度も繰り返しました。企業が利益を拡大しても賃上げや雇用の拡大につながらないことは、国民が肌身で感じている実感です。最近のNHKの世論調査でも、安倍内閣の経済政策で賃金が上がると思うかという問いに、「上がる」という答えがわずか11%で、「上がらない」が半数に近い46%でした。安倍首相は、賃上げの保障がどこにもない言葉だけの姿勢を改め、本気で賃上げ対策をとるべきです。
本気で内部留保活用を
賃上げと安定した雇用の拡大がデフレ不況から抜け出すカギであることは、首相自身が9月の政労使会議で「勝負どころ」と述べたことでもあきらかです。しかし、そのための対策といえば法人税減税による大企業優遇です。日本共産党の志位和夫委員長が代表質問で、「法人税を減税すれば賃上げにつながる」という保障はどこにあるのかとただしましたが、首相はまともに答えられず、冒頭のような弁明を繰り返すばかりです。
第1次安倍内閣も含まれる1997年から2012年までに法人税は7・5%引き下げられましたが、同じ時期に賃金は平均70万円も下がりました。大企業は利益を賃金に回さなかったどころか、賃金の削減策をとって内部留保をため込みました。それがいま270兆円に膨らんでいます。志位委員長が指摘した厳然たる事実に、首相がまともに答えられなかったのは当然です。
首相は、復興特別法人税の廃止について、「賃金上昇につなげることを念頭に検討するもの」といいました。これも何の根拠も保障もない話です。国際通信社のロイターが9月から10月にかけて、復興特別法人税の廃止にともない、その分のお金をどう使うか企業調査を実施しています。それによると、賃金に回すとの回答は5%にすぎません。雇用人員の増強も5%です。もっとも多かった回答は、内部留保にとどめるというもので30%でした。首相の表明が的外れであることを裏付けるものです。
首相が本気で賃上げを実現しようと思うなら、財界にたいして内部留保の活用による賃上げを正面から求めるべきです。内部留保のたった1%活用するだけで月1万円の賃上げが可能な大企業が8割です。内部留保をさらに膨らませるだけの法人税減税は愚策です。
同時に重要なのは、財界の要求にこたえて派遣労働の拡大など低賃金で不安定な雇用を拡大しようとする政策の転換です。非正規雇用の増大をくい止め、雇用は正社員が当たり前というルールの強化をはかるべきです。働くもの全体の賃金を底上げするために最低賃金を時給1000円以上にすることも急がれます。
国民の所得増やす政策へ
景気回復を実感しているかどうかを問う最近の世論調査は、「実感しない」という人が76・4%(時事通信調べ)という高さです。NHKでも50%です。安倍政権の経済政策が国民生活の改善になっていないことを示しています。安倍首相は、国民の声を深刻に受け止めるべきです。大企業への減税ばらまきを改め、国民の所得を増やす政策への転換を強く求めます。