2013年10月26日(土)
「知る権利」に真っ向対立
秘密保護法案を提出強行
政府は25日、国の安全保障に関わる広範な情報を「特定秘密」として国民のアクセスを制限する「秘密保護法案」を閣議決定し、国会に提出しました。安倍晋三首相は同日の衆院本会議で「早期成立に努める」と表明。一方、法案の重大な問題点が伝わるにつれ、日本弁護士連合会、日本ペンクラブ、憲法・メディア法研究者をはじめとする国民の各層に反対や懸念の声が急速に広がっています。
法案は、政府が軍事・外交・治安の各分野で「秘匿が必要」と判断した情報を政府自らが「秘密」に指定。第三者が妥当性を検証する仕組みはなく、国民の「知る権利」とは真っ向から対立します。
公務員などの秘密漏えいは、10年以下の懲役で大幅に厳罰化。「秘密」に働きかけるメディアや国民も厳罰の対象となります。「秘密」を知ろうとする行為も「共謀、教唆、扇動」として独立に処罰され、国民の言論活動を広く弾圧する仕組みです。
政府・与党は9月から法案の「修正」作業を進めてきましたが、本質はなんら変わっていません。「知る権利」や報道・取材の自由には「配慮」のみ。取材行為についても「法令違反」「著しく不当な方法」以外は「正当な業務とする」と当たり前のことを述べているにすぎません。森雅子担当相は22日の会見で取材活動も処罰する考えを明言しました。
成立を急ぐ背景には、日本に提供した秘密情報の漏えいを懸念する米国の意向があります。安倍政権は3日の日米2プラス2(外交・軍事担当閣僚会議)で、軍事同盟にとって「情報保全が死活的に重要な役割を果たす」ことを確認。事実上、法整備を米国に公約しています。
法案は、外国政府や国際機関に「秘密」を提供する枠組みも規定。同盟国のドイツやフランスへの背信行為ともいえる大規模盗聴で非難を浴びる米国との“情報同盟”としての側面もあります。
法案をめぐる国民世論の高まりは、首相官邸前の連日の緊急行動に発展しています。
「秘密保護法案」の骨子
■国の広範な情報を秘密に
・軍事・外交・治安の分野で安全保障に関する情報を政府自身が秘密指定
・第三者のチェックなし
・半永久的に更新可
・国会への開示も拒否可
■公務員・国民に厳罰
・公務員の秘密漏えいに懲役最高10年、国会議員も5年
・「管理を害する行為」でメディア・国民も懲役最高10年
・共謀、教唆、扇動で漏えいがなくても広く処罰
■国の“身辺調査”法制化
・秘密を扱う公務員・民間企業社員に国が“身辺調査”
・その家族・親族も調査