2013年12月3日(火)
コメ政策見直し 紙議員に聞く 上
国の関与 全面的になくす
政府の「農林水産業・地域の活力創造本部」は11月26日、「農業基本政策の抜本改革について」を決定しました。米の生産調整政策(減反+転作)を廃止するなど農業政策を大転換させ、2014年度から実施します。政策転換について、日本共産党の紙智子参院議員・党農林・漁民局長に聞きました。(聞き手・北川俊文)
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―この政策で最も変わるのは何ですか。
生産調整は、国民の主食であり、百数十万人もの生産者がいる米の需要供給と価格を安定させる上で一定の役割を果たしてきました。転作の条件づくりなど問題もありましたが、農家も産地も国が示す計画のもとで生産してきました。それを5年後に全廃し、生産量も価格も市場任せにする米政策の大転換です。同時に、重大なことは、これが環太平洋連携協定(TPP)参加、米の輸入の増大を念頭に、米への国の関与を全面的になくそうとしていることです。
現場にも混乱
しかも、これは、実際に生産している農家や生産組織の声や要求に基づくものではありません。日本の米づくりが小規模で国際競争力がないのは「減反」が原因だなどという財界とマスメディアの“批判”や、農業関係者から継続が求められている「米の直接支払い」制度を“バラマキ”だと攻撃する自民党の主張を優先しています。米生産の現場に混乱をもたらすのではないかと思います。
主な内容は、政府が生産目標を割り当て、それに基づき生産を行う農家に助成金を支給し、米の需給関係を安定させてきた従来のやり方を5年後になくすというものです。また、自民党農政が掲げる「攻めの農政」に基き、米以外の作物の生産振興や農業の多面的機能に着目した助成政策の組み替えなども行われます。
米に関しては、生産目標の割り当てのほか、「米の直接支払い交付金」(10アール当たり1万5000円)や、米価暴落時の「米価変動交付金」などを廃止します。ただ、来年度から全廃すると現場が混乱するとして、直接支払い交付金は、来年度から半減します。「米価変動交付金」などの収入影響緩和対策は、来年産から廃止します。その後、対象を認定農業者、集落営農、認定就農者に限定し、農業者拠出による仕組みへの移行が計画されています。
この政策変更は、豊作・凶作時の変動が避けられず、生産者が百数十万人もいる米の需給変動を全面的に市場任せにするものです。米の過剰で生産者価格が大暴落しても、生産者の責任にされます。価格の乱高下や交付金の廃止・削減で最も打撃を受けるのは、現在の米価水準と交付金への依存が大きい大規模経営や集落営農です。地域経済にも大きな打撃を与えかねません。生産現場でも、大規模農家や集落営農の経営者などの「将来の見通しがたたない」という声が多数です。
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生産伸び悩み
―政府は、新しい政策で農業者の所得が増え、米以外の生産が増えると言いますが。
「食料自給率・自給力の向上に向けた水田のフル活用」政策として、飼料米、麦、大豆など「需要に応じた戦略作物」を対象にした水田活用の直接交付金が設けられることを指しているのでしょう。水田で米以外の作物を作る転作の条件整備や、転作作物への価格・所得補償の充実には、私たちが求めてきたことも含まれます。それ以外は、組み替えはありますが、大きな変更はありません。
今回の目玉とされているのが、飼料用米の交付単価の引き上げです。飼料米生産は、飼料製造工場や畜産経営と連携できれば有効であり、私たちも実用化を求めてきました。しかし、生産は伸び悩んでいます。その原因には、地域に飼料工場や実需者(畜産農家)がない、いったん栽培すると品種が混ざってしまい食用米が作れなくなる、などが挙げられています。
10アール当たりの助成金が現行8万円から最高10万5000円に増やされます。しかし、面積から収量に基づく払いに変わるため、最高額の支払いを受けるには680キロ(主食用の平均収量は530キロ)の生産が必要です。
新たな対策では、「『地域政策』として、農業の多面的機能発揮のための地域活動に対する多面的機能支払い」(日本型直接支払い)が創設されます。二つの対策があります。農地維持支払いとして、水田では10アール当たり3000円(北海道2300円)、畑では2000円(北海道1000円)が支払われます。資源向上支払いとして、水田では2400円(北海道1920円)、畑では1440円(北海道480円)が支払われます。中山間地域直接支払い、環境保全型農業直接支援は、基本的な枠組みが維持されます。(つづく)