2013年12月17日(火)
食料危機救うか 穀物キヌア
アンデス原産 少量の水で栽培可能
国際年式典
2013年は国連が定めた「国際キヌア年」。過酷な気候でも栽培可能な南米原産の穀物キヌアの主要生産国ボリビア南部の都市オルロで14日、国際年を締めくくる式典が催されました。
キヌアの普及プログラムを推進してきた国連食糧農業機関(FAO)のダシルバ事務局長は式典の中で、アフリカ、アジア、中東の干ばつや食料不足に苦しむ国々を中心にキヌアの試験栽培への関心が広がっていることを明らかにしました。
大きな可能性
同局長によると、アフリカでは、深刻な干ばつにより小麦栽培が壊滅状態にある国々が、少量の水でも栽培可能なキヌアに注目しています。アジアでも、ブータン、ブルネイ、スリランカがFAOの支援を受けて、家族農業でキヌアの生産を新たに始めました。
ダシルバ氏は、中南米原産のトウモロコシやジャガイモが今や「世界の食料の基礎となっている」が、「キヌアが同じ道をたどろうとしている」と述べ、キヌアの大きな可能性を強調しました。
ボリビアの国営通信ABIなどの報道によると、同国のモラレス大統領は式典で、「キヌアの生産は、世界の飢えを満たすために申し分のないチャンスを提供する」、「母なる大地からの贈り物だ」だと演説。さらに「われわれがたたかうべき主要な戦争は、飢餓一掃のための戦争だ」と述べ、世界の飢餓問題を放置して、軍備に巨額の予算をつぎ込んでいる先進国の姿勢を批判しました。
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「復権」の政策
キヌアは約7000年前から生産されてきましたが、近代文明のもとでは「先住民の食べ物」としてさげすまれてきた歴史をもっています。ボリビアでは、モラレス氏が先住民出身で初の大統領となって以降、キヌアの「復権」政策が進められてきました。
ABIの報道によると、キヌア生産の情報普及活動や投資の拡大の結果、同国での生産量が2年前の1万9000トンから6万1000トンへ3倍以上に増加しています。
式典では、直径4メートル高さ50センチの巨大な伝統キヌア料理「ピサラ」が披露されました。白赤黒3色のキヌア約280キロ、リャマの肉150キロなどを使い、50人の料理人グループが30時間かけて完成させました。オルロ県政府は、これをギネス世界記録として登録申請するとしています。(菅原啓)
キヌア 南米アンデス地方原産の穀物。マイナス8度から38度の気温変化に耐えられ、低地でも標高4000メートルの高地でも、養分の少ないやせた土壌でも育ちます。タンパク質、カルシウム、鉄、亜鉛など各種栄養分をバランスよく含んでいます。国連総会は2011年、世界の食料不足を改善するうえでも重要なキヌアの普及を目的として、13年を「国際キヌア年」とすることを決議しました。