2014年1月11日(土)
モザンビーク 強権政治に批判の中、安倍首相訪問
日本の農地大開発が土地奪う 農民反発
安倍晋三首相はゼネコンや商社の関係者を同行し、中東・アフリカ4カ国を歴訪しています。そのひとつ、11日(日本時間12日)に訪問するモザンビークでは、日本などによる大規模農業開発に“農民を犠牲にするな”と反発が起こり、日本のNGO(非政府組織)や研究者も「安倍首相は農民の声に応えて」と声を上げています。 (君塚陽子)
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モザンビークは天然ガスをはじめ豊富な資源を持ち、外国の投資によって経済成長著しい国です。日本は昨年6月、サハラ以南のアフリカで初の2国間投資協定を結ぶなど急速に関係を深めています。
“資源ほしさ”
「“家族ビジネス”とやゆされるゲブザ大統領の利権や汚職、格差拡大に民衆の不満が強まっており、現政権はその不満を力で抑えようと、強権化を進めています」と東京外国語大学准教授(国際関係学)の舩田(ふなだ)クラーセンさやかさんは指摘します。
昨年10月、ゲブザ政権は野党の拠点を軍事攻撃。野党は1992年以来の和平合意を破棄し、緊張が高まっています。平和解決を求め、国連事務総長やカトリック教会、欧米諸国などが次々と声明を出しました。
しかし日本は、中国、インドと並んで沈黙。
舩田さんは「米国もcondemn(非難する)と強い外交用語を使うなか、“資源ほしさ”に黙り、首相がこのタイミングで訪問する日本に現地からも疑問が出ている」と解説します。
強権的な対応は、ゲブザ政権と日本、ブラジルが09年から北部ですすめる大規模農業開発のプロサバンナ事業にも表れています。
日本の耕地面積の3倍、1400万ヘクタールに外国投資を導入し、大豆などの一大穀倉地にする計画です。日本は同事業を「地元農民は粗放農しか知らず、未開墾地が広がる」と説明してきました。
しかし、同国最大の農民組織、全国農民連合(UNAC)は反発。昨年5月、UNACなど23団体は「実態を無視した計画で、協力国ブラジルの利権の介入もあり、土地収奪の危険が高く不透明」と緊急停止と見直しを求める「3国首脳あて公開書簡」を安倍首相に手渡しました。
その後、現地を訪ねた舩田さん、日本国際ボランティアセンターなど日本のNGOに、女性の農民は「土地問題を口にすると、警察が現れ、農民を拘束する」と訴えました。
“声に応えよ”
同国の人口の8割が農民で、99%が家族農業の小農です。UNACは「モノカルチャー(単作)の大規模農業や緑の革命でなく、食料主権を可能にする家族農業、特に国家計画策定の支援」を求めています。日本のNGOも「小農支援が真の目的なら、安倍首相は訪問を機に農民の声に応えるべきだ」と主張します。
舩田さんは言います。
「日本が事業を見直さないのは“投資に影響する”“中国に負ける”ためと政府筋から聞こえてきます。現地では女性や人権、環境団体も『弱者犠牲の経済成長は拒否』と立ち上がっています。強権や私利私欲の追求者でなく、将来を思う人たちとの連携や応援こそ、長い目でみて両国関係の礎になります」
モザンビーク 広さ80万平方キロ(日本の2.1倍)、人口約2400万人。公用語はポルトガル語。1964年から74年までポルトガルを相手に解放闘争をたたかい、75年独立。77年から92年まで内戦が続きました。日本は、鉱物資源のほか、エビを輸入。