2014年1月14日(火)
主張
農業・農民運動
地域農業発展、自給率向上を
和食がユネスコ無形文化遺産に登録され話題を呼びました。お節料理で新年を迎えた人も多かったでしょう。食は命のもとであるとともに文化です。その食と、それを生み出す農漁業を地域社会に根付かせることは、つり合いのとれた持続的な社会を守り、発展させるために不可欠です。日本には自然的にも、社会的にもその条件があります。それを生かし実現することこそ国政の重要な責任です。
願いに逆行する農政改革
ところが自民・公明連立の安倍晋三政権は、「食料輸出大国」で世界的な「食糧戦略」を展開するアメリカが、農産物関税の全面撤廃や食の安全基準の緩和を求めている環太平洋連携協定(TPP)交渉を推進し、農政「改革」と称して農政のあり方を変えるなど、逆行する政策をすすめています。
国民の主食、コメ政策では、生産調整と価格の下支えを廃止し、農家経営と需給の安定に対する国の責任を放棄しています。自らが生産に携わる者を基本とした制度を解体して農業に営利企業を参入させ、大規模経営だけに政策を集中しようとしています。
これらの政策は農業者や国民が求めているものでなく、TPPを推進し、農業や農地、協同組合をめぐるルールを「岩盤規制」だと攻撃し、新たなビジネスチャンスをねらう財界の要求を色濃く反映したものです。水田をはじめ多様な農家経営によって支えられてきた地域農業と集落の維持、国土・環境維持などの役割も、少量多品目生産など地域の条件を生かした農家の努力をも無視し、効率優先、利益追求を農業に持ち込むものといわなければなりません。
今年は、国連が定めた「国際農家年」です。発展途上国はもとより世界の各地で地域の条件にあわせて営まれてきた小経営・家族経営の役割を見直し、その維持・発展を援助することを呼びかけています。農協など協同組合運動は、その重要な柱になるものです。3月に提出が予定される国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)最終報告案は地球温暖化で農産物の生産量が減ることを指摘するともいわれ、食料増産は国際社会の責任にもなっています。
大企業のための輸出市場確保のため農産物市場の開放をすすめ、農産物価格の安定や需給安定対策など農家を応援する政策を削減し、いまや食料自給率を40%にも低下させてしまった日本がいまやるべきことは、こうした農政を見直し、農業と農村社会を、若者を含む国民にとって魅力あるものに変えていくことです。農業で生活できる条件を拡大し、就業機会をふくめ、若者が定着できる条件を拡大することです。ことしをその転換の年にしなければなりません。
地域要求を結集して
そのためにも、TPP交渉からの撤退と「農地中間管理機構」などを通じた営利企業の参入を許さない世論づくりが欠かせません。農産物の価格保障と直接支払いの充実による農家経営とその集団への支援、後継者に対する思い切った援助などの地域要求をかかげ迫っていくことが求められます。農民の自発的組織の強化と農協の役割発揮により、自給率の向上と安全な食料確保、地域社会の維持など国民合意を広げるために力をつくそうではありませんか。