2014年2月22日(土)
主張
TPP閣僚会合
国民への裏切りは許されない
安倍晋三内閣は、22日からシンガポールで開催される環太平洋連携協定(TPP)交渉の閣僚会合で、「合意に向けて全力を尽くす」と、交渉「妥結」にむけてアメリカの要求にそって譲歩する姿勢を強めています。甘利明TPP担当相が18日、586品目からなる農産物「重要5項目」について「一つ残らず微動だにしないということでは交渉にならない」と述べたのはその表れです。
公約や「国益」はどこに
甘利氏の言明は、TPP交渉にむけた国会決議にも、自民党の国民に対する公約にも真っ向から反します。だいたい、TPP参加にあたって、安倍首相は「守るべきは守る」「国益は守る」と約束してきたはずです。先の参院選で自民党は、農産物5項目の関税維持はもとより、国民皆保険の維持や食の安全、国の主権を脅かすISD条項は取り入れないなどの6項目の公約を掲げ、それを確保できないなら交渉から離脱するとも明言しました。それを完全に投げ捨てて、「妥結」に突きすすむのは断じて許されません。
政府・自民党は異常な秘密交渉をたてに交渉の実態を隠し、国会にも国民にも「公約を守る」「これ以上1ミリも譲らない」などと再三言明してきました。しかし、昨年春の日米首脳会談で確認したとする「(TPPは)聖域なき関税撤廃を前提とするものではない」という安倍首相の言明はまったくの偽りであったことが、アメリカのフロマン通商代表の姿勢や米議会に提出されたTPA(大統領貿易促進権限)法案からも明白になっています。フロマン氏は米関連業界の要求を背景に、日本側の牛肉・豚肉などの関税維持は考えられないと公言し、TPA法案は、日本共産党の紙智子議員が参院予算委員会で指摘したように、日本政府が議題になっていないとしてきた遺伝子組み換え食品の解禁を条件にあげているのです。
これらの事実を見ただけでも、TPP交渉が、オバマ大統領のいうように「アメリカ製品の売り先確保」のためであり、日本を含む多国籍企業の市場確保のために、国民のくらしに関わる規制も関税自主権も放棄させるものであることが鮮明になっています。まさに、国民にとっては「百害あって一利なし」です。
18日夜、首相官邸前ではTPPに反対する広範な人々が緊急に駆けつけ、抗議の声をあげました。全国各地でも集会や宣伝行動が粘り強く展開されています。TPP反対の声はアメリカを含む関係国の中でもわきおこり、交渉経過の公表を求める国際的な共同も広がっています。
いまこそ交渉から離脱を
「妥結に全力」という安倍内閣の姿勢は、「国益」を損なう異常なものです。交渉経過も明らかにせず、みずからの公約も国会決議も投げ捨てることは国民に対する裏切りです。主権を侵害し、国民のくらしを脅かす内容には断固反対すべきであり、それができないことが明白になっているいま、交渉からの離脱をこそ表明すべきです。今回の閣僚会議にも参加すべきではありません。
TPP交渉をめぐるたたかいは、経済主権と食料主権を維持し、国民のくらしを守る政治を強めるのか、それとも放棄するのか、まさに重大な正念場にあります。