2014年5月3日(土)
豚流行性下痢の被害深刻
全国で10万頭以上死ぬ
青森の農家が支援求める
全国33道県の519農場の養豚場で発生、10万頭以上が死んでいる(1日現在)豚流行性下痢(PED)。被害を受けた青森県の養豚農家の男性が、国と県の対策が不十分だとして、現在のワクチンの効果を含めた調査、全国の養豚農家から収集した情報の提供、具体的な感染防止対策など被災農家への支援を求めています。 (青森県・藤原朱)
「ワクチンを接種した母豚から生まれた子豚が感染しました。豚を失い、周りからも孤立している。被災農家を助けてほしい」―。この男性の養豚舎でPED感染が確認されたのは4月中旬。ウイルス性の感染病のPEDは、ヒトには感染しませんが、生まれてから10日以下の子豚の死ぬ率が高いのが特徴です。
男性は昨年末、九州で拡大したPED発生を知り、万一に備えワクチンを購入。2月初旬から分娩(ぶんべん)前の母豚に接種していました。それにもかかわらずPEDに感染しました。かかりつけ獣医からも「なぜ効かないのか不思議だ」と言われ、男性はウイルス株の変異も疑っています。
抗生物質も全く効きませんでした。感染が発生してから約10日。この期間に生まれた子豚約160頭は、生まれてから2〜3日ですべて死にました。手塩にかけて育て、半年後に出荷する予定の豚でした。
出荷自粛による損失、消毒や投薬にかけた費用など被害額は1500万〜2000万円。「乳をあげられずに乳腺炎になる母豚が体調を崩す可能性もある。そうなればさらに被害は大きくなる」と不安を募らせます。
男性は「効果があると信じワクチンを使ったが感染した。発症後の県の指導も、ありきたりで、訪問指導や対策情報もない。国は、この事態を重く受け止めて、感染源や経路など改めて徹底調査し、農家を守る支援をしてほしい」と思いをぶつけました。全国の仲間たちと情報を共有したいと訴えています。
農水省が共済金検討 農民連・畜全協
農民運動全国連合会(農民連)と畜産農民全国協議会(畜全協)はこのほど、豚流行性下痢(PED)の防止策と被害農家への支援を求めて農水省に要請しました。
養豚農家の森島倫生畜全協会長が「PEDワクチンの有効性を疑問視する声が広がっている」と指摘するとともに、ワクチン代の補助を求めました。農水省側は「畜舎の衛生状況によって効き目に違いがでる」とのべ、「十分な量のワクチンは確保したので、活用してほしい」と答えました。ワクチン助成制度はないとしましたが、子豚被害を共済金の対象にする検討姿勢を示しました。
豚流行性下痢(PED) 家畜伝染病予防法において「届け出伝染病」に指定されている豚の伝染病。豚のふんに含まれたウイルスを通じて感染し、主な特徴は下痢・嘔吐(おうと)。成長した豚は感染しても発症しない場合もあります。