2014年5月20日(火)
石破氏「集団的自衛権は中小国守るため」
実際は大国の侵略・干渉の口実
自民党の石破茂幹事長が18日のNHK「日曜討論」で、「国連軍がでない場合、(中小国は)大国の横暴によってやられるままだ」とのべ、集団的自衛権は大国の横暴から中小国を守るために国連憲章に導入されたものかのように主張しました。しかし、これは、集団的自衛権の導入の経過や実際の行使の事例から見ても間違いです。
石破氏が念頭に置くのは国連憲章第51条です。同条は「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には…個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」と定めています。
しかし、この条項は1944年8月のダンバートン・オークス会議で提案された国際平和機構案(国連憲章原案)にはなく、憲章を採択した45年6月のサンフランシスコ会議の際に米国が提起して盛り込まれたものです。
米国の思惑は、“中小国のため”という石破氏の説明とは逆に、旧ソ連の拒否権に邪魔されることなく、自分の勢力圏で軍事行動をとれるようにしようというものでした。
米国が主導する45年3月の米州諸国会議では、軍事同盟を合理化するために、いずれの1国に対する攻撃も全加盟国への攻撃と見なす「チャプルテペック決議」がなされました。米国はこれを大義名分に、「集団的自衛権」の条項を発案。ソ連も賛成し、国連憲章に第51条を盛り込んだのです。
その後、集団的自衛権が行使された例としてあげられるのは、米国のベトナム戦争やニカラグア侵攻、グレナダ侵攻、旧ソ連によるチェコスロバキアへの軍事介入など。「集団的自衛権の行使」は、“中小国のため”どころか、その多くが大国による他国への無法な侵略・干渉を合理化する口実として用いられてきました。(山田英明)