2014年6月23日(月)
食品表示基準案が明らかに
消費者より事業者優先も
農薬混入事件で問題 制度を存続
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消費者庁が検討してきた「食品表示基準(案)」の内容がこのほど明らかになりました。近く内閣府の消費者委員会食品表示部会に示す予定です。
食品表示基準は、食品の名称、アレルゲン、保存の方法、消費期限、原材料、添加物、栄養成分の量及び熱量、原産地など、事業者が表示すべき事項を定めるものです。
表示を一元化した新食品表示法が昨年6月に成立したことから、新しい基準の策定が進められていました。
明らかになった内容をみると、まず、冷凍食品への農薬混入事件で問題になった「製造所固有記号」制度を存続させています(第3条)。製造所を記号で表示する同制度は、問題のアクリフーズ群馬工場製と消費者が分からず、農薬が混入したとみられる商品の回収が進まない要因となりました。しかも「2カ所以上で製造する企業」にのみ同制度を認めることは、大企業と零細事業者の格差を広げることになります。
今回、義務化された「栄養成分」では、部会でも議論になった「トランス脂肪酸」(マーガリンや菓子類に含まれる)が「任意表示」にもされていないことが明らかになりました。「トランス脂肪酸」の表示は心臓疾患などへの対策として、米国やカナダ、韓国などでは義務化され、欧州や国際機関でも義務化が検討されています。
「アレルゲン」については、表示を省略できる場合が、これまでの「抗原性が認められない」から「科学的知見に基づき抗原性が低い」に変更されています。「ない」から「低い」と事実上、基準を緩める形です。
これまで消費者団体は「食品表示を考える市民ネットワーク」を結成し、食品の“成り立ちを正しく示す表示を”と求めてきました。今回、明らかになった食品表示基準(案)は、総じて事業者側の従来の主張を取り入れたものになっています。
国民の意見を踏まえた根本的な改良が望まれます。消費者委員会食品表示部会での公正・公平な審議が注目されます。
(君塚陽子)