2014年6月24日(火)
陸自ヘリ官製談合 川重社長が積極関与
「契約無効で損害」 株主が提訴
陸上自衛隊の新型ヘリコプター「UHX」の開発事業をめぐる官製談合事件で、川崎重工業の村山滋社長が、防衛省との謀議内容について報告を受け、談合を把握していたことを23日、同社長らを相手どった株主代表訴訟の代理人らが明らかにしました。
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同事件は2012年9月に発覚。担当する防衛省技術研究本部(技本)の椎盛治2等陸佐(当時)らと川重の担当者が共謀。椎2佐らが競合する富士重工業と防衛省の秘密資料を川重側に手渡し、同社提案の選定を取りはからった事件です。
この事件では、昨年1月、椎2佐と技本担当室長の札本道博2等陸佐(同)が罰金100万円の略式命令。川重側は、関与が従属的だったとして起訴猶予となり、捜査が終結しました。
複数場面で登場
23日、神戸市に住む川重の70歳代の男性株主が、村山社長と、コンプライアンス(法令順守)担当者だった高尾光俊元副社長に談合発覚による契約無効で受けた損害金など約46億円を同社に賠償するよう求める訴えを神戸地裁に起こしました。
原告代理人によると、入手した川重従業員の供述調書では、当時、航空部門の責任者だった村山社長の名前が複数の場面で登場。10年12月の本部長会議で、「富士重工との差別化」を図るために防衛省の担当者と謀議していることの報告を村山社長は受けていました。11年4月の企画会議でも報告を受けていたといいます。
従業員の供述調書では、新型ヘリのエンジンには三菱重工製を搭載するよう防衛省の担当者が、村山社長に直接依頼していたといいます。これを受けて村山社長は、三菱重工の従業員に、協力を要請していたといいます。
経営責任を追及
訴状は「村山社長は、これを止めるどころか防衛省の担当者や三菱重工の従業員と面談することにより、搭載する主力エンジンを決定するなど、積極的に事件に関与していった」と指摘し、村山社長の経営責任を追及するとしています。
提訴後、記者会見した原告代理人の富田智和弁護士は「この事件は、略式起訴であったため正式な裁判はなく、真相が明らかにならなかった。公開の法廷で官製談合の本質を明らかにしたい」とのべました。
この事件では、本紙は、防衛省の担当幹部が川重側と秘密会合を開催、ヘリに必要な機能を記した「仕様書案」「評価基準案」などを提供していたことを入手した内部文書でスクープしました。
株主代表訴訟 取締役など会社役員が違法行為などにより、会社に損害を与えた場合、株主が会社に代わって、その責任を追及する訴訟。原発事故を起こした東京電力や、政界工作を行った生命保険会社などに対して株主代表訴訟が起こされています。