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2014年6月27日(金)

主張

高村座長試案

「限定」は悪質なごまかしだ

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 他国のために武力を行使する集団的自衛権の行使容認に向け、与党の密室協議が「最終局面」に入ったと報じられるなど、事態は緊迫しています。高村正彦自民党副総裁が示した閣議決定原案の「修正」案は、武力行使の範囲を日本周辺に限りたいといわれる公明党に“配慮”し、より限定的な内容になったとされます。しかし、実際は、「限定」とは正反対に、行使の範囲を際限なく拡大する危険な仕掛けが盛り込まれています。

危険なわな潜ませ

 閣議決定原案は、「他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがある」場合に武力を行使できるとし、「国際法上は、集団的自衛権が根拠になる」として、集団的自衛権の行使容認を鮮明にしたものです。

 「修正」案は、「他国」に対する武力攻撃を「我が国と密接な関係にある他国」に対する武力攻撃に、「おそれ」がある場合を「明白な危険」がある場合に文言を変えました。しかし、「我が国と密接な関係にある」ことや「明白な危険」があることを判断するのは、政府です。時の政府の解釈次第で、集団的自衛権行使の範囲がどこまでも広がる危険はいささかも変わりません。

 現に「修正」案は、日本をめぐる安全保障環境について「大量破壊兵器や弾道ミサイル、国際テロなどの脅威が世界のどの地域において発生しても、我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼし得る」とし、「今後他国に対して発生する武力攻撃であったとしても、その目的・規模・態様等によっては、我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得る」としています。

 「大量破壊兵器」や「国際テロ」は、米国のイラク侵略戦争やアフガニスタン報復戦争の口実になりました。「大量破壊兵器」や「国際テロ」によって日本と「密接な関係」にある米国が攻撃され、日本政府が「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」と判断すれば、日本は米国のために戦争に乗り出し、米国とともに武力行使することが可能になるのは明らかです。

 閣議決定原案が「国際法上は、集団的自衛権が根拠になる」としていた部分を、「修正」案が「国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合もある」に変更したことも重大です。「場合もある」との表現により、武力行使の根拠となるのは集団的自衛権に限らず、国連安全保障理事会の決定に基づいて軍事制裁を加える仕組みである集団安全保障が根拠になる場合もあることに含みを残しました。集団的自衛権であれ、集団安全保障であれ、日本が参加できる仕掛けをひそかに潜り込ませたものです。あまりに姑息(こそく)です。

閣議決定を許すな

 与党協議は当初、自衛隊の具体的活動の事例を検討していましたが、一致点が不明なまま棚上げされました。このまま閣議決定が強行されれば、政府の判断で無限定に武力行使ができることになってしまいます。

 国民的な議論や国会でのまともな審議もないまま、密室の「言葉いじり」で戦後の安全保障政策を大転換し、「殺し殺される国」へと暴走することは許されません。


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