2014年8月5日(火)
原水爆禁止2014年世界大会
国際会議宣言
原水爆禁止2014年世界大会・国際会議が4日、採択した「宣言」(全文)は次の通りです。
広島と長崎への原爆投下から69年がたった―
被爆70年にむけ、我々はここ広島から、核保有国はじめすべての政府に呼びかける。「核兵器のない世界」の達成のため、責任ある行動をただちに開始することを。そして、世界の人々に訴える。諸国政府をつきうごかす広大な世論と運動をつくりあげることを。
世界にはいまなお1万6千発をこえる核兵器が存在している。
1945年8月、2発の原子爆弾によって広島と長崎は筆舌に尽くしがたい「地獄」と化した。その年の末までに21万もの命が奪われ、かろうじて生き延びた人々も、病と心身の傷、健康不安など、はかり知れない苦しみをいまなお強いられつづけている。被爆者たちの言葉は、この兵器が破滅的で、非人道的な結果をもたらすことを教えている。地球上のいかなる場所にも、この再現を許してはならない。
核兵器は、人類の生存への脅威でありつづけている。現存の1%に満たない核兵器使用でも、地球規模の気候変動をもたらし、世界的な飢饉(ききん)を引き起こしかねないと結論づける研究報告もある。貧困、福祉、保健衛生、教育などへの資金がもとめられる一方で、きわめて不合理にも、核戦力の維持、近代化に巨額の財源が投資されており、世界の軍事費は1兆7000億ドルにのぼっている。
一握りの国が核兵器を独占しつづけていることは、平等、互恵、平和を基調とする世界秩序への重大な障害である。核兵器を軍事的、政治的優位を実現する手段とすることは、国連憲章などの紛争の平和解決原則に反するとともに、これまで核保有国が表明してきた「核兵器のない世界」達成の合意や誓約への背信である。マーシャル諸島共和国は、核軍備撤廃義務の不履行で、核保有国を国際司法裁判所に提訴した。
核兵器は直ちに全面的に禁止し、廃絶されなければならない。
我々はすべての国、とりわけ核保有国がただちに、核兵器廃絶を真正面にすえ、核兵器全面禁止・廃絶条約の交渉を開始することを要求する。被爆70年に開かれる核不拡散条約(NPT)再検討会議を、そのための機会とすべきである。
核兵器禁止条約をもとめる声はいまや世界の大勢となっている。条約の交渉開始をもとめる国連総会決議はいずれも加盟国の3分の2をこえる賛成で採択されている。とりわけ、137カ国が賛成した、条約交渉の至急開始をもとめる「核軍縮に関するハイレベル会合のフォローアップ」決議に注目すべきである。
2010年のNPT再検討会議は、核保有5大国を含む全会一致で「核兵器のない世界」を実現することに合意し、そのために「必要な枠組みを創設する特別な努力をおこなう」ことを確認した。この具体化、実践がもとめられている。
こうして核兵器禁止条約が国際政治の焦点となりつつあるにもかかわらず、一部の核保有国は、「核抑止力」論に固執し、核兵器廃絶の実現を正面から議論することに反対している。
「核抑止力」論は、先制攻撃も含め必要とあれば核兵器使用も辞さないとするものである。核兵器がもたらす甚大な結果とそれへの恐怖によって、「国益」をはかろうとする横暴は許されてはならない。しかも、それは、他国の核兵器保有を誘発し、結果として、すべての国の安全にたいする脅威を増大させている。「核抑止」政策は、意図的にであれ、偶発的にであれ、核戦争を引き起こす危険を増大させる。我々は「核抑止力」論の放棄をつよく要求する。
核保有国のこうした姿勢は、広がる批判に直面し、矛盾を深めつつある。
核兵器が人類と共存できない、との被爆者の訴えが、世界を動かしてきた。2010年NPT再検討会議は、「核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道的結果をもたらすことに深い懸念」を表明した。
2012年に16カ国からはじまった核兵器の残虐性を告発し、その使用禁止と廃絶を迫る「核軍縮の人道的側面」共同声明は、昨年の国連総会では125カ国が賛成するまでに急速に広がった。146カ国が参加した第2回「核兵器の人道的影響に関する国際会議」(メキシコ)は、「目標の達成に貢献する外交過程を始める時が来た」ことを表明した。
「核抑止力」論に固執し、非人道的な核兵器を保持しつづけることには、一片の道理も道義もない。いま、このことを徹底して明らかにし、核兵器禁止条約の交渉開始を要求する世論をさらにひろげよう。こうしてこそ、核保有国の抵抗をのりこえ、「核兵器のない世界」への展望を切りひらくことができる。
あらゆる紛争・対立を平和的・外交的に解決することは、核兵器のない平和な世界を実現する上でも、ますます重要となっている。軍事基地や軍事同盟の強化をはじめ「抑止力」への傾斜は、対立と緊張を激化させるだけである。我々は、外国軍事基地の撤去を要求するとともに、軍事同盟の強化、ミサイル防衛に反対する。
領土・領海問題を含む東アジアの緊張の高まりは、平和的・外交的手段で解決されなければならない。紛争を戦争にエスカレートさせないという東南アジア諸国連合(ASEAN)の対話と交渉、行動規範作りの努力は、それが可能であることを示している。
北朝鮮の核兵器問題は、朝鮮半島非核化のための6カ国協議を再開し、2005年の共同声明はじめ、これまでの合意にもとづいて、平和的に解決されなければならない。イランの核問題の外交的解決を支持する。NPT再検討会議で合意された、中東における非大量破壊兵器地帯をめざす国際会議の開催と全当事者の誠実な努力がもとめられる。
ガザ地区に対するイスラエルの大規模な軍事攻撃をただちにやめさせ、停戦を実現すべきである。パレスチナ問題の国連の関連諸決議にもとづく公正な解決を強くもとめる。ウクライナにおける停戦と外国の軍事干渉の停止を要求する。この問題も、全ウクライナ人の尊厳と主権の尊重のもと、全当事者の話し合いによって解決されなければならない。
日本は被爆国として、また憲法9条を持つ国として、核兵器のない平和な世界をめざす先頭に立つべきである。ところが、日米軍事同盟のもとで、アメリカの「核の傘」に依存し、集団的自衛権の行使をめざすなど、憲法を蹂躙(じゅうりん)して「海外で戦争する国」への動きを急速に強めている。それは、近隣諸国との緊張を高め、国際的な信頼を掘り崩し、結果として日本を含む北東アジアの平和と安定を脅かすものである。
こうした政府の動きに反対して、首相官邸を数万人が取り囲むなど、若い世代をはじめ広範な日本国民がたちあがっている。憲法の平和原則を守り、生かすことで、地域と世界の平和に貢献するこの運動はきわめて重要である。
在日米軍基地の縮小・撤去を求め、辺野古への米海兵隊の新基地建設に反対する沖縄県民はじめ日本国民のたたかいに強い連帯を表明する。東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故をうけた、被災地の復興のとりくみ、原発の再稼働反対の国民的な運動に連帯する。
核保有国はじめすべての政府に対して、「核兵器のない世界」の実現を強く迫る運動を、それぞれの国で発展させよう。草の根からの行動を力に、国際機関、諸国政府、自治体など公的機関との共同を大きく広げ、それらを、NPT再検討会議が開催される2015年4月、ニューヨークでとりくまれる国際会議や平和行進などの行動に結集しよう。
―「原爆展」、被爆者証言など、ヒロシマ・ナガサキの実相をひろげながら、「核兵器全面禁止のアピール」国際署名など、核兵器禁止条約の交渉開始をもとめる世論をひろげよう。多様な文化的媒体、ソーシャルメディアなども活用し、草の根から多様な行動をくりひろげよう。
―国連をはじめとする国際機関、目標を共にする諸国政府、平和首長会議を含む自治体との共同をいっそう強めよう。核兵器廃絶デー(9月26日)、第69回国連総会、第3回「核兵器の人道的影響に関する国際会議」(12月8〜9日、オーストリア)などを節目に国際共同行動を発展させ、世論と運動を結集しよう。
―被爆者への援護・連帯を強化し、核実験、核開発の被害者をはじめ、あらゆる核被害者への支援と連帯をすすめよう。枯葉剤(ダイオキシン)、劣化ウラン弾などの戦争被害者を支援しよう。原発ゼロと再生可能エネルギーへの転換を求める運動との連帯を発展させよう。
軍事費削減、生活と雇用の改善、福祉の向上、自由と民主主義、人権の擁護、地球環境の保護、性差別の克服、社会的不正義の解決などをもとめるすべての人々と手をたずさえ、「核兵器のない平和で公正な世界」への広大な共同と連帯をつくりだそう。
そして被爆70年の2015年を、核兵器廃絶を実現する決定的な転機としよう。
2014年8月4日