2014年9月5日(金)
主張
高校教科書採択
現場の意見覆す介入やめよ
高校で使う教科書の採択で、教育委員会などが特定の教科書を狙い撃ちして排除する事態が各地で起きています。学校ごとに決めることになっている教科書の選定に介入し、実教出版の日本史教科書を選ばせないようにしているのです。検定に合格した教科書であるにもかかわらず、それを使わせないというのは、あまりに露骨な教育内容への不当な介入であり、絶対に許されません。
特定教科書の異常な排除
高校の教科書は検定に合格したものの中から、各学校で担当教師が中心になって自校の教育課程や生徒の実態に合わせて選び、その教科書を教育委員会が採択する仕組みになっています。
ところが、東京都や大阪府、神奈川県では、実教出版の日本史教科書を選ばせないよう教育委員会が「見解」を出したり、管理職に指示したりしています。この結果、東京都と神奈川県では実教出版の日本史教科書の採択はゼロになりました。
川崎市教育委員会は、市立高校2校が実教出版を選んだのに、別の教科書に無理やり変更させました。新潟県では担当教員が選んだ実教出版の教科書を、校長が強制的に変更させることが多くの県立高校で起きています。
実教出版の日本史教科書を選ばせない理由として東京都などの教育委員会が挙げているのは、同教科書が「日の丸・君が代」について、「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述していることです。しかし、東京や大阪をはじめとして「日の丸・君が代」を教職員や公務員に強制している自治体があることは事実であり、文部科学省の検定でもこの記述は問題がないものとされています。
検定に合格している教科書を権力で排除するのは異常で、現場の教育の自由を侵害するものです。
実教出版の日本史教科書を選ばせない動きは2012年に東京都と横浜市で始まり、各地に広がっています。埼玉県では昨年、実教出版の教科書を選んだ高校の校長を県議会の文教委員会が呼びつけ、「県の教育方針に沿わない」などと追及するという重大な政治介入がありました。文教委員会に所属議員のいない日本共産党県議団は「議会が教科書の内容にまで踏み込んで介入することがあってはならない」と厳しく批判しました。
東京都などの教育委員会が実教出版の教科書を使わせようとしないことに、自分たちが「日の丸・君が代」を強制しているという事実を高校生に知らせたくないという意図があるのは明白です。これは子どもたちの知る権利、学ぶ権利を侵すものです。
教員の役割尊重してこそ
教科書はそれを使って教える教員の意見を尊重して選んでこそ、授業もよいものになります。国際的にみても、教科書の採択の権限は教師や学校にある国が主流です。国際労働機関(ILO)・ユネスコが1966年に採択した「教員の地位にかんする勧告」は、教員は「生徒に最も適した教材および方法を判断するための格別の資格を認められたものである」とし、教科書の採用についても「不可欠な役割を与えられるべきである」と述べています。東京都などの教育委員会は教科書選びへの不当な介入をやめ、現場の意見を尊重した採択をおこなうべきです。