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2014年9月28日(日)

主張

リニア建設計画

不安と懸念の声を受け止めよ

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 JR東海が早期の着工をめざすリニア中央新幹線(東京・品川―名古屋)にたいして、建設ルート予定の沿線自治体や自然保護団体などから環境悪化への不安と懸念の声が強まっています。JR東海が、国民から出ている疑問や要望などにきちんとこたえず、計画を一方的に推し進めているためです。“着工先にありき”の姿勢には大義も道理もありません。国土交通省はJR東海のリニア建設を認可すべきではありません。

「認可するな」の声広がる

 リニア中央新幹線はJR東海が実施主体ですすめているもので、2027年に品川―名古屋で開業、45年に大阪まで延伸させる計画です。8割以上を地下トンネルにする、日本の大型開発史上前例のない巨大プロジェクトです。

 JR東海は、国交省から近く工事認可が出ることをあてこんで、リニア実験線(山梨県)でマスメディア向けの試乗会を行ったことに続き、一般向けの有料試乗会も募集するなど「時速500キロのスピード」「東京―名古屋間最短40分」などの売り込みに躍起です。

 しかし、そんな「ばら色の夢」を描ける計画ではありません。8月末にJR東海が公表した最終的な環境影響評価書(アセスメント)「補正版」を見ても問題山積であることは明らかです。「補正版」は、JR東海の評価書にたいして環境省や国交省が「生態系に不可逆的な影響を与える可能性が高い」「相当な環境負荷が生じる」などの意見をつけて改善を求めたことを受けて「修正」したものですが、それらの意見はほとんど反映されませんでした。

 長大なトンネルを掘削することで発生する東京ドーム50個分以上にあたる残土、地下水脈の寸断によってもたらされる水源の枯渇、ダンプカーなど工事車両の交通量増大による地域生活・自然環境への影響などについて、どのように対処していくのか、具体的な対策を示していません。国交省が求めた「地域住民等への丁寧な説明」にも真面目に対応するのか、不信と疑問がもたれています。リニア建設を前提にした政府の意見にまで、まともに耳を貸そうとしないJR東海の姿勢は異常です。

 “地域を活性化させる”とのうたい文句のリニアによって、かけがえのない財産である自然が破壊され、観光資源までが奪われる危険が現実のものになっています。

 リニアが通過する長野県大鹿村の村議会は、生活環境悪化への懸念は高まっているとして「懸念が解消されるまでは工事実施計画を認可すべきではありません」とする意見書を全会一致で可決しました。日本自然保護協会は「環境影響の低減措置が不十分」として不認可を求めています。旅館経営者や町づくりの団体などからも計画見直しの声が広がっています。JR東海と政府は、こうした声を真剣に受け止めるべきです。

国民的議論をいまこそ

 総額9兆円(東京―大阪)の空前の建設費をJR東海だけで負担できるのか。人口減少社会に突入するのに採算見通しはあるのか。世界に前例のない「超電導磁気浮上方式」の安全性はどうか。リニア計画の根幹にかかわる大問題について国会をはじめ国民的議論が必要です。無謀なリニア建設に突き進むことは、日本の未来に重大な禍根を残すだけです。


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