2014年10月3日(金)
「慰安婦」問題、“誤った国際認識 断固として正す”
自民党が決議 性的虐待の事実も否定
自民党の国際情報検討委員会(原田義昭委員長)は2日、朝日新聞が日本軍「慰安婦」問題で吉田証言を取り消したことなどを受け、「誤った国際認識は断固として正していかなければならない」とする決議を行ったことを党外交部会などの合同会議に報告しました。
同決議は9月19日に同党の外交・経済連携本部と国際情報検討委員会があげたもので、「『強制連行』の事実は否定され、性的虐待も否定されたので、世界各地で建設の続く慰安婦像の根拠も全く失われた」などと主張しています。
国際情報検討委員会は、自民党が3月に党内に設置したもので「日本の内政外交に対し中国、韓国などの反日宣伝とも思える情報があふれている」「国として主権や国益を守り抜くためには、単なる『中立』、『防御』の姿勢から積極的に攻める『情報発信』や『情報戦略』に転ずることが必要」(6月17日の「中間取りまとめ」)などとしています。
国際世論へ重大な挑戦
日本の深刻な孤立もたらす
自民党が外交・経済連携本部と国際情報検討委員会の連名であげた「決議」は、日本軍「慰安婦」問題の本質を覆い隠すものです。
「決議」は、「朝日新聞が慰安婦問題などにつき虚偽の報道であったことを認めた」ことを口実に、「いわゆる慰安婦の『強制連行』の事実は否定され、性的虐待も否定されたので、世界各地で建設の続く慰安婦像の根拠も全く失われた」などと指摘。「慰安婦」問題で日本軍の関与を認め謝罪を表明した「河野談話」に直接言及していないものの、事実上その否定を狙ったものです。
本紙9月27日付掲載の論文「歴史を偽造するものは誰か―『河野談話』否定論と日本軍『慰安婦』問題の核心」で明らかにしたように、「朝日」の記事取り消しに飛びついて強制連行の事実を否定しようとしても、「慰安婦」が自由を奪われた状態で強制的に兵士の性の相手をさせられた―性奴隷状態とされたという「慰安婦」問題の本質に何ら変わりはありません。「決議」は、この核心について何の検討もないまま「性的虐待」そのものを正面から否定しており、突出して異常な内容です。
自民党の国際情報検討委員会では、こうした内容で国際的な情報戦略の強化を目指すことを公言しています。
「慰安婦」問題ではこれまでに七つの国・地域の議会から日本に対する抗議や勧告の決議があげられています。そのいずれもが問題にしているのは、「強制連行」の有無ではなく、慰安所における強制使役=性奴隷制度の事実です。自民党の今回の「決議」は国際世論への挑戦であり、日本の深刻な孤立をもたらすだけです。
重大なことは、安倍首相がこうした自民党の動きを黙認していることです。安倍政権は「河野談話の継承」を表明しており、本来ならこうした動きを厳しく批判すべき立場にあります。「河野談話」否定の自民党の動きを放置することは、政権自らの立場とも矛盾します。 (中祖寅一)