2014年10月15日(水)
北陸新幹線工事談合 根深い癒着
“機構OBの企業に配慮”
来年3月に開業する北陸新幹線の融雪設備工事をめぐる談合事件で、業者側に有罪の判決が出されたほか、発注元の独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(横浜市)のナンバー2の不正関与が第三者委員会の報告書で明らかになるなど、癒着の根深さが浮き彫りになっています。(藤沢忠明)
談合事件は、公正取引委員会の調査で判明。2011年9月〜12年11月、高砂熱学工業(東京都千代田区)、ダイダン(大阪市)など各社の担当者が料理店で会合を開くなどして、事前に落札業者や入札価格を決めていた疑いがあり、機構職員から予定価格に関する情報を聞き出していたといいます。
この事件では、すでに業者側に予定価格を示唆したとして、官製談合防止法違反罪に問われた機構東京支社の元設備部長=懲戒免職=と同部機械第三課長=停職3カ月=の有罪が確定しています。
公正な競争阻害
業者の担当者8人も独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪に問われ、このうち、9月30日には、東京地裁で、東洋熱工業(東京都中央区)の元担当部長(49)と、法人としての同社に対する判決がありました。
稗田雅洋裁判長は、談合にかかわった11社の落札額は計174億7000万円にのぼるとして、「国家的なプロジェクトの一環として発注された公共性の高い事業で談合が行われた。公正な競争をはなはだしく阻害し、社会経済に対する影響は大きい」と指摘。元部長に懲役1年2月、執行猶予3年、同社に罰金1億2000万円を言い渡しました。
ナンバー2関与
一方、機構が9月26日に公表した第三者委員会の報告書は、機構ナンバー2の宮林秀次副理事長(62)の不正関与を明らかにしました。
宮林氏が、新幹線や在来線の建設計画担当理事だった10年6月から昨年4月ごろのこと。応札額に加え、提案内容も加味する総合評価方式による入札で、(1)JV(共同企業体)のスポンサー(JVの代表者)に支社長や地方局長以上の役職を務めた機構OBが在籍していない(2)JVの2番手企業に機構OBがいない―などの場合は、評価点の最高点をつけないことを支社長らに指示したといいます。
「すでに再就職しているOBが肩身の狭い思いをしてはいけないという誤った配慮があった」というわけです。
本紙の調べでは、ダイダン、柿本商会(金沢市)といった談合業者が、森喜朗元首相、北村茂男、馳浩両衆院議員、岡田直樹参院議員ら石川県選出の自民党国会議員や県議に11年と12年に300万円近い献金をしています。(2月11日付既報)
与党整備新幹線建設促進プロジェクトチームは、国土強靱(きょうじん)化の名のもとに、北陸新幹線や北海道新幹線など整備新幹線の工期短縮や財源確保を政府に求め、国土交通省が15年度予算の概算請求で整備新幹線に720億円を計上するなどの動きが強まるなか、政財官の癒着の構造にメスを入れる必要があります。