2014年10月19日(日)
南太平洋の島民 カヌーデモ
島を気候変動から救え
豪の石炭積み出しに抗議
石炭の積み出し港として有名なオーストラリア東部ニューカッスルで17日、地球温暖化による海面上昇に苦しむ南太平洋の島民や環境保護活動家ら数百人が、カヌーなどで石炭輸出に抗議する海上デモを行いました。ロイター通信などが報じました。
石炭が石油に比べて2倍の温暖化ガスを排出することから、環境団体は石炭採掘そのものに反対しています。
警察の警護を受けた貨物船の出港阻止はできなかったものの、「私たちの島に気候変動が与える影響に注目を集めることができた」(フィジーの活動家ジョージ・ネセワさん)と言います。
マーシャル諸島のロヤック大統領の娘、ミランさん(26)も行動に参加し、「私たちの国民と島が、気候変動による干ばつや、高潮による洪水に苦しむのを見てきた」と思いを語りました。
ニューカッスルは年間4000隻以上が出入りする主要な貨物港で、このうち9割以上が近くの炭鉱で産出される石炭を積載する船舶です。オーストラリアの石炭輸出額は398億豪ドルで、鉄鉱石に次ぎ第2の輸出品目。日本へも製鉄用のコークス炭が大量に輸出されています。
「石炭推進」豪 世界が批判
“温暖化対策に逆行”
世界各国の政治・経済界の指導者が真剣に気候変動への取り組みを開始している中で、「世界の一致した行動への主要な障害物」(ロイター通信)と批判されているのがオーストラリアです。
アボット首相は13日、クイーンズランド州キャバルリッジ炭鉱(三菱商事と豪英資源大手BHPビリトンの合弁)の開山式に出席し、「石炭は世界のエネルギー需要にとって極めて重要だ。石炭悪玉論はやめよう」と述べました。
このような同政権の姿勢には、ドイツのメルケル首相の顧問を務めたシェルンフーバー教授が、世界的な石炭使用は先細りであり、経済的な「自殺戦略」だ、と厳しく批判しています。
昨年9月に発足したアボット政権(自由党と国民党の連立)は、環境保護より経済成長を優先すると主張。前労働党政権時代に導入された炭素税や鉱山税などを廃止したほか、世界遺産のサンゴ礁「グレートバリアリーフ」に面した石炭積み出し港の拡張を認可しました。2020年までに20%という再生可能エネルギーの普及目標の廃止、化石燃料産業への補助金の継続なども行っています。
アボット首相は、9月にニューヨークの国連本部で開かれた気候サミットを欠席。11月にブリスベーンで予定されているG20の会議の議題から気候変動問題を外しました。
野党・労働党のバトラー議員(環境問題スポークスマン)は「世界が前進しているときに、カナダと同じく、広範なプロセスから取り残される数少ない国になる」と警告しています。(伊藤寿庸)