2015年1月26日(月)
安保法制や空爆後方支援
事件口実に首相言及
NHK番組
安倍晋三首相は25日のNHK番組で、過激組織「イスラム国」による日本人の誘拐・殺害に言及する一方、「このように海外で邦人が危害に遭ったとき、現在自衛隊が持てる能力を十分に生かすことができない。そうしたことも含めて、法整備を進めていく」と述べ、この事件を口実に集団的自衛権行使容認を具体化する安保法制整備を推進する考えを示しました。
軍事作戦では救出保証なし
首相自身、「人命第一」と繰り返しておきながら、同事件を口実にして「海外で戦争できる国」づくりを進める狙いを示した発言は、厳しい批判を免れません。
首相の発言の根拠となっているのは、昨年7月に強行した「閣議決定」です。「閣議決定」は、集団的自衛権に関する憲法の解釈変更だけでなく、歴代政府が「海外での武力行使」にあたるおそれがあるとしてきた自衛隊の海外での日本人救出などの「任務遂行のための武器使用」についても、解禁へと変更しました。
しかし、実際の救出作戦には、人質の拘束場所などを含めた正確な現地情報や、受け入れ国の同意など、さまざまな前提条件が必要です。今回の事件に限らず、軍事作戦で人質が救出できる保証は何もありません。
残る日本人1人の安否も分からない状況で、軍事的選択肢を広げる議論を先行させる首相の姿勢は、国民の怒りや不安の政治利用と受け止められても仕方ないものです。また、戦前の日本の侵略戦争に見られるように、「自国民保護」は海外派兵を正当化する常套(じょうとう)手段にされてきました。
解放に向けた外交努力こそ
さらに首相は同番組内で、司会者から「イスラム国」への空爆を続ける米国など「有志連合」への自衛隊による後方支援も安保法制で認めるのかと問われ、「国連の決議がある場合も、ない場合も、後方支援であれば憲法上は可能だ」として、排除しない考えを表明しました。
しかし、昨年7月の集団的自衛権行使容認の「閣議決定」は、自衛隊の後方支援を「非戦闘地域」に限定していた歯止めを撤廃し、「戦地」派兵も解禁しています。
日本共産党による追及で、安倍首相自身、たとえ後方支援であっても自衛隊が戦闘に巻き込まれ、武器を使用する可能性を認めています。
そもそも安倍政権は、アルジェリアでの邦人拘束・殺害事件(2013年1月)を口実に国家安全保障会議(日本版NSC)を創設するなど、一連の「戦争できる国」づくりへの暴走に着手した経緯があります。
政府が現段階で何よりも優先すべきは、日本人解放に向けた外交努力です。安保法制整備をはじめとする軍事政策の推進のために今回の事件を利用することは、到底許されるものではありません。(池田晋)