2015年2月4日(水)
主張
大詰め迫るTPP
背信的交渉やめ撤退決断こそ
日米の事務レベル協議が3日(日本時間)から再開された環太平洋連携協定(TPP)交渉をめぐって、農産品など日本政府が“聖域”と位置づけてきた分野を含め、日本がアメリカに次々譲歩しているという報道が連日のようにされています。牛肉・豚肉の関税を大幅に引き下げる案が浮上し、オバマ米大統領が要求したコメの輸入拡大にも日本が譲歩案を示したなどです。しかも、甘利明TPP担当相は、交渉のなかみについては明らかにしないまま、「譲歩の幅をできるだけ小さい範囲で決着させるのがすべて」とのべ、譲歩の報道を否定していません。
もれ伝わる重大な譲歩
こうしたなか、日本に対して関税撤廃をもっとも強硬に主張してきた全米豚肉生産者協議会が先ごろ発表した声明は重大です。声明は、「豚肉について日本の提案で重大な進展があった」ことを理由に、TPP交渉を支持することを表明しています。日本国内では生産者にも消費者にも譲歩の内容はふせられているのに、アメリカでは交渉経過を関係団体に明らかにし、事前了解をとりつけていることが示されています。
安倍晋三内閣は、日米などの交渉では譲歩を続け、その内容を一部マスメディアに流しながら、TPP交渉が秘密を義務付けているのをタテに、国民への情報提供を拒んでいます。その一方で、農産物の「重要5項目」などでの譲歩を禁じた国会決議を守る努力をしているかのような態度をとり続けています。まさに国民に対する背信そのものです。
アメリカなどが進めるTPPがアメリカ流のルールを関係国に押し付け、アメリカの利益だけを求めていることは、TPP協定は米国民の所得を増やすためだというオバマ大統領の言明からも明らかです。米農務省は昨年10月、TPPが妥結した場合2025年までに参加12カ国の農産物貿易は85億ドル増えるが、輸入増の70%は日本であり、米国産米の輸出は2倍強増えると発表しました。まさに日本の一人負けであり、自給率が39%にすぎない国民の食料をいっそう外国まかせにし、主食までアメリカに頼ることになります。まさに売国的な内容です。
安倍内閣は、臨時国会で批准した日豪経済連携協定(EPA)でも畜産物の関税引き下げを受け入れました。日米交渉でも、その影響を検証しようともせず、それを上回る譲歩を提案していることは疑いありません。
安倍内閣は、労働、農業、医療など国民に役立つ部分が残る経済ルールを「岩盤規制」と位置づけ、それに穴をあけることをアベノミクスの重点課題としています。TPPをめぐって譲歩を続けるのもその暴走と一体です。
交渉撤退はまだ可能
政府が秘密裏にすすめているTPPをめぐる交渉が、農産物の「重要5項目」の開放をはじめ、国民の医療や労働環境、農業・農村の維持と食料の安全・安心、国の主権などに悪影響を及ぼすことは明らかです。労働者、農民、市民の中にも、反対の声が日々高まっています。
交渉中のいまなら国民の暮らしに取り返しのつかない打撃をあたえないうちの撤退が可能です。将来に禍根を残さないよう撤退決断をの声を、強めましょう。