2015年2月21日(土)
主張
TPP・農水相献金
不安に付け込むなど言語道断
西川公也農水相が、国から補助金を受け取っている企業などからの献金を自らが代表を務める自民党支部で受け取っていたことが明らかになり、国会でも追及を受けています。補助金を受け取った企業からの献金は法律違反です。献金した企業の中には環太平洋連携協定(TPP)で直接影響を受ける精糖業界の関連企業もあります。自民党のTPP対策委員長や農水相としてTPP交渉を推進しながら、関係者の不安に付け込んで違法な献金を受け取っていたとするなら、それこそ言語道断です。
相次ぐ「政治とカネ」疑惑
西川氏をめぐる「政治とカネ」の疑惑は立て続けに明らかになっており、過去にも経営破たんして出資金の返還などが問題になっている安愚楽(あぐら)牧場からの献金や親族企業からの不透明な事務用品の購入などが問題になりました。そうした疑惑も解明されないまま、国から補助金を受け取ることが決まっていた木材加工会社や精糖業界の団体が入居するビル管理会社からの献金が明らかになったのは見過ごしにできません。
政治資金規正法は政治家個人への企業・団体献金を禁止するとともに、たとえ政党であっても、国から補助金や助成金を受け取っている企業の献金は、補助金などを受け取ってから1年間は禁止しています。税金で賄う補助金などの交付が献金の見返りとならないためで、禁止されていることは政治家にとって常識です。
西川氏は「木材加工会社が補助金を受け取っていることは知らなかった」とか、「補助金を受け取る精糖業界団体とビル管理会社は別」などといいますが、100万円単位の巨額の献金を受け取りながら、「知らなかった」は通用しません。木材加工会社は以前から補助金を受け取っています。精糖業界団体とビル管理会社は所在地も責任者も同じです。いいわけはなりたたず、西川氏が発覚したあとあわてて返したというのも、後ろめたい金だったことを証明するようなものです。
西川氏が精糖業界の関連企業から献金を受け取ったのが、西川氏が自民党のTPP対策委員長として日本の交渉参加をめぐって対応にあたっていた真っ最中だったことも見過ごせません。砂糖は農産品の中でもコメや牛肉・豚肉などとともにTPP参加によって日本の業界が受ける打撃が大きく、農業関係者が輸入拡大に反対している「重要5項目」のひとつです。精糖業界が西川氏などへの献金でそれを阻止しようとしたとすれば、献金を出した側も受け取った側も金で政治を左右しようと考えたのか国民への説明が求められます。
TPP交渉脱退こそ
しかも西川氏がTPP対策委員長や農水相として関わってきたTPP交渉は、交渉の経過や内容も国民に明らかにしないまま、日本がアメリカなどの要求に大幅に譲歩し、安倍晋三首相でさえ「交渉は最終局面」と認める段階です。これでは西川氏が関係者の不安に付け込んで献金を受け取っただけで、不安にこたえるどころか、交渉を推進した結果にしかならないのか。それこそ西川氏の行動は、農業関係者を二重三重に裏切り、愚ろうしたことになります。
西川氏の責任を明確にするとともに、TPP交渉から撤退を求めていくことがいよいよ重要です。