2015年3月22日(日)
過去の無駄事業
橋下大阪市長は「二重行政の弊害」いうが
仕組みより政策の誤り
維新は大開発・カジノ推進勢力
「大阪市と大阪府の二重行政をなくし、税金の無駄遣いを解消します」―。大阪維新の会は、こんなかけ声で大阪市をなくす「都」構想を推進しています。彼らの言う「二重行政」とは何なのでしょうか。ここには大きなごまかしがあります。(藤原直)
橋下徹市長が演説で毎回のように「二重行政の無駄」の象徴として挙げるのが、大阪市湾岸部にある旧「WTCビル」(256メートル)と府南部・関西空港対岸にある「りんくうゲートタワービル」(256・1メートル)。20年ほど前、市と府の第三セクターがそれぞれ建てて相次いで破綻しました。
どちらも国と関西財界が府市に押し付けたゼネコン浪費型の巨大事業です。日本共産党は反対しました。こうした過去の無駄な事業は、自民党市議も反省を込めて語っているように、府と市があったことによって生まれた失敗ではなく、「政策の失敗」によるものです。
橋下氏が演説で使う「府市二重行政の弊害」と書かれたパネルには、府立と市立の体育館や中央図書館の写真まで掲載されています。これらは多くの府民・市民に利用されている施設で府市当局も「一定の役割分担がある」と活用の方向を打ち出してきたものです。「無駄な二重行政」でも何でもありません。
橋下氏が「二重行政の解消」の名の下に実際に進めているのは、府立大学と市立大学の統合計画や、府立病院への統合を口実とした住吉市民病院の廃止など、今の住民サービスの切り捨てです。
さらに“大阪には府にくわえて「巨大な財布」を持つ政令市が存在するから無駄が起きるのだ”と、過去の政策選択の誤りを仕組みの問題にすり替えて、大阪市そのものを解体しようとしているのです。
いま問題なのは、過去の無駄遣いを批判する維新が、大阪市から権限と財源を奪い、「実行力が劇的に強化された知事」(維新「大阪広域マニフェスト」)の下で約1兆5000億円ともいわれる不要不急の大型開発計画を進めようとしていることです。
その象徴が、大阪から関西空港まで、たった「5分(の時間短縮)のために2500億円(の事業費)と評価することもできる」と橋下氏自身も認めた鉄道「なにわ筋線」や、交通量が減る中での高速道路・淀川左岸線延伸部の建設(3000億〜4000億円)です。
橋下氏が「都構想の試金石」と位置付ける湾岸部へのカジノ誘致も大問題です。市議会での「これ以上、日本でギャンブル依存症を増やすのか」との批判にも、橋下氏は「いまの日本の状況は、よくここまでの依存症で止まっているなという有識者もみんなびっくりするような状況だ」と聞く耳をもたず、関西府県民がカジノに通いやすくするアクセス鉄道の整備を進めようとしています。