2015年6月9日(火)
農協法「改定」案に批判噴出
地方公聴会 陳述人
農協法「改定」案を審議している衆院農林水産委員会は8日、金沢市と山梨県昭和町で地方公聴会を行いました。意見陳述人として出席した農業関係者からは「改定」案について“現場の実態とは別の議論だ”などの批判が噴出しました。
「全中の監査は必要」 金沢
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「改定」案は、全国農協中央会(JA全中)を一般社団法人化し、単位農協(単協)への監査権限を廃止することが内容。
金沢市での公聴会で、石川県農協中央会の上坂英善会長は、安倍晋三首相が「JA全中が単協の自由な活動を阻んでいる」と述べてきたことについて、「そんな実態はない」と反論。JA全中に監査を受ける小松市農協の西沢耕一組合長も「全中に指示を受けることはない」と述べ、会計と業務を一体で監査を受ける現行制度の必要性を語りました。
政府が狙う准組合員(農業者以外)のJA利用制限に対して上坂氏は「住民生活に大きく影響する。絶対に認められない。地方創生に逆行だ」と批判しました。
加賀市農業委員会の小川廣行会長は、改定案が農業委員会の公選制を廃止するとしていることに関し「市町村長による恣意(しい)的な選任では必ず支障がでる」と述べました。
日本共産党の畠山和也議員は、法案で法人経営者などが農協理事の過半数を占めることを可能としていることにふれ、「経営判断の偏りや営利優先に進む恐れがあるのではないか」と質問しました。西沢氏は、専業農家や兼業農家なども含めた多様な意見によって運営されるべきだとの考えを示しました。
「農協は生きる支え」 山梨・昭和
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山梨県昭和町の公聴会では、JAこま野の小池通義組合長が「議論のプロセスが逆で、農家が主人公なのに『ここまで議論がきたから(現場の意見は)どうだ』というやり方だ」「農協が手を引けば、(不採算の)山間地のスタンド、金融機関はなくなってしまう」と指摘しました。
山梨市の農園主・深沢敏彦氏は「全中の監査をなくしたら農家所得が上がるなどという魔法のようなことがあるのか」と疑問を呈し、「生産資材の調達や営農指導など農協は生きる支えだ。農協改革案がTPPへの参加加速のなかで出てきたのではと危惧する」と話しました。
コメのブランド化を推進してきたJA梨北の仲澤秀美常務理事は「法律や各種規制が変わった時の指導があったから全国の農協はリスクを排除できた。全中は必要な組織だ」と述べました。
日本共産党の斉藤和子議員が各陳述人に質問し、「JAが果たしてきた役割が今後もしっかり守られていくことが大事だ」と主張しました。