2015年6月13日(土)
主張
温室効果ガス削減
日本は国際責任果たすべきだ
地球温暖化対策の新しい枠組みについて話し合うためドイツのボンで開かれていた国連の作業部会は、近く合意文書の草案をまとめることを確認して閉幕しました。作業部会は、2020年以降のすべての国が参加する枠組みづくりに向け、年末にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)の準備会合です。世界で5番目の温室効果ガス排出国である日本は、ようやく30年までに13年比で26%削減する案をまとめましたが、発展途上国などから不十分との批判が相次いでいます。日本が国際的責任を果たすことが急務です。
不名誉な「化石賞」独占
ボンでの作業部会の期間中、世界の環境NGOネットワークなどから、日本に1度に三つの「化石賞」が贈られたことが話題になりました。一つは日本の排出削減目標が極めて低いこと、二つは国際的な開発援助銀行に地球温暖化対策の投資基準をつくる提案に反対していること、三つは日本が途上国での石炭火力発電所事業に資金援助していることだと現地からの報道は伝えています。「化石賞」は交渉で最も後ろ向きな国に贈られる不名誉な賞です。
世界的な異常気象や環境破壊を引き起こしている地球の温暖化を抑えるため、産業革命後の気温の上昇を2度未満にすることを目標に温室効果ガスの排出を減らしていくことは、国連の気候変動枠組み条約にもとづく国際的な約束です。これまでの「京都議定書」に代わる、すべての国を対象にした新たな枠組みを今年末のCOP21までに合意することも繰り返し確認された国際的な約束です。
準備会合などで各国の削減目標や途上国の温暖化対策への資金援助などについての議論が続けられていますが、欧州連合(EU)、アメリカ、中国などが相次いで温室効果ガスの排出削減目標などを明らかにするなかで日本は削減目標を提示せず、早く目標を提示すべきだと国際的な批判をあびてきました。今回のボンでの会合や同時期に開かれた主要国首脳会議(G7)で日本が示したのもあくまでも原案で、正式には7月までに決定し、提出するとされています。
発展途上国やNGOからは、遅すぎるうえに中身も不十分だとの声が相次いでいます。日本が目標として持ち出した26%削減は、東日本大震災後、火力発電所の運転でもっとも温室効果ガスの排出が多かった13年を基準にしたもので、1990年を基準にすれば約18%にすぎません。これでは日本が示している50年には80%削減という長期目標の実現も困難になります。見せかけの削減で取り繕うとすること自体、国際的な責任を果たす姿勢ではありません。
再生エネ拡大で削減増を
日本政府の温室効果ガス削減目標は電源構成の見通しと一体で、政府が示した30年の電源構成案では石炭や天然ガス、石油への依存を続け、原発についても高い依存をめざす一方、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーは22〜24%でしかありません。太陽光7%、風力はわずか1・7%です。
再生可能エネルギーを拡大すれば、温室効果ガスの排出も減らすことができます。ごまかしの政府原案は撤回し、地球温暖化防止の国際的な責任に応えられる、野心的な目標を打ち出すべきです。