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2015年6月20日(土)

主張

「安保環境の変容」

戦争法案の口実にもならない

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 戦争法案をめぐり安倍晋三政権は、歴代政府の憲法解釈を変更し集団的自衛権の行使を認めた根拠として、「日本を取り巻く安全保障環境の根本的な変容」を挙げています。しかし、この間の国会審議で、日本を取り巻く安全保障環境がいつ、どのような根本的変容を遂げたのか、具体的な説明は一切ありません。安倍首相が繰り返す中東・ホルムズ海峡の機雷封鎖も「直ちに危険があるわけではない」(中谷元・防衛相)と認めています。安倍政権による憲法解釈変更の根拠がすでに破綻していることは明白です。

ホルムズ封鎖は非現実的

 歴代政府は、戦争を放棄し、戦力の保持を禁じた憲法9条の下でも、日本に対する武力攻撃が発生した場合に限ってのみ、武力の行使(個別的自衛権の行使)ができるとの解釈を採ってきました。

 これに対し安倍政権は戦争法案で、日本に対する武力攻撃がなくても「他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」(存立危機事態)で武力の行使(集団的自衛権の行使)ができるとしました。その根拠となっているのが、「我が国を取り巻く安全保障環境が根本的に変容」し、「今後他国に対して発生する武力攻撃であったとしても…我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得る」(9日提示の政府見解)という認識です。

 安倍政権が「安全保障環境の根本的な変容」の例として挙げているのは「パワーバランス(力の均衡)の変化や技術革新の急速な進展、大量破壊兵器などの脅威」(同)です。しかし、衆院憲法審査会で自民党推薦の参考人として集団的自衛権の行使容認を「憲法違反」と指摘した長谷部恭男早稲田大学教授は、こうした例は「極めて抽象的」であり、「説得力ある根拠だとは思えない」と断じています(15日、日本記者クラブ)。

 実際、他国が攻撃されて自国の存立が脅かされたという例が世界にあるのかという日本共産党の宮本徹議員の再三の追及にも、政府は具体例を示せませんでした(19日、衆院安保法制特別委員会)。

 安倍首相が繰り返し持ち出すホルムズ海峡の機雷封鎖による石油途絶という例はどうか。

 ホルムズ海峡をめぐる情勢変化によって日本の存立を脅かす現実の危険が生まれているのか―。日本共産党の赤嶺政賢議員の追及に対し、中谷防衛相は「中東地域の安全保障環境の変化が直ちにホルムズ海峡の航行に悪影響を及ぼす危険があるというわけではない」と認めました(15日、同前)。法案強行の理由は全くないのです。

米国言いなりで武力行使

 「安全保障環境の根本的変容」は憲法解釈変更の後知恵にすぎず、集団的自衛権行使容認ありきで行われたのは明らかです。

 首相官邸で安全保障・危機管理を担当していた柳沢協二元内閣官房副長官補は、首相がホルムズ海峡の例を持ち出すのは「(機雷)掃海活動の分野で自衛隊の能力が優秀であって、その活用をアメリカが望んでいるからという以外にない」と指摘しています(『新安保法制は日本をどこに導くか』)。

 アメリカ言いなりに海外での武力行使に乗り出す違憲の戦争法案は廃案以外にありません。


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