2015年7月2日(木)
主張
戦争法案と世論
「違憲」の声は広がるばかりだ
安倍晋三政権が今国会での成立を狙う戦争法案(安全保障関連法案)について、半数以上の人が「憲法違反」と答える世論調査が相次いでいます。今国会での成立に反対の人はいずれも約6割に上ります。今国会での強行が許されないのはもちろん、国民多数が「違憲」と考える法案は直ちに廃案にする以外にありません。
国民の中で政権は孤立
▽安保関連法案に関し「合憲」「違憲」の見解のどちらがより納得できるかとの問いに対し、違憲57・7%、合憲21・7%(「産経」6月30日付)▽法案は「憲法に違反している」56%、「違反していない」22%(「日経」同29日付)▽憲法学者の「憲法違反」との主張を「支持する」50%、これに反論する安倍政権の主張を「支持する」17%(「朝日」同23日付)▽「憲法に違反していると思う」56・7%、「違反しているとは思わない」29・2%(「共同」同21日配信)
政府が提出している法案を「憲法違反」と考える人がこれだけ多くを占めるのは異例の事態です。法案を「合憲」と強弁する安倍政権は国民の中で孤立しています。
国会審議でも議論をすればするほど法案の違憲性は明らかになるばかりです。日本共産党などの論戦や自民党推薦を含む憲法学者や元内閣法制局長官の参考人質疑により、憲法違反の問題が次々と浮き彫りになっています。
日本共産党は、米国の地球規模での戦争で自衛隊がこれまで「戦闘地域」とされてきた地域まで出掛け、弾薬の補給や武器の輸送などの「後方支援」=兵たんを行うことについて、「他国の武力行使と一体でない後方支援は憲法に反しない」との政府の議論が世界で通用しないことなどを明らかにしてきました。小林節慶応大学名誉教授(憲法)も、自衛隊が行う「後方支援」は他国の武力行使との「一体化そのものだ」とし、「兵たんなしに戦闘はできない」「露骨な戦争参加法案」だと批判しました。
国連平和維持活動(PKO)と関係なく、戦乱が続く地域に自衛隊を派兵して治安活動を行うことについては、宮崎礼壹(れいいち)元内閣法制局長官が、自衛隊に駆けつけ警護や任務遂行のための武器使用を認めたことで「停戦合意が崩れればたちまち深刻な混乱を招き、結果的に憲法違反の武力行使に至る恐れが大きい」と告発しています。
集団的自衛権を発動して米国の戦争に自衛隊が参戦し、海外で武力行使に乗り出す問題では、自民党推薦の長谷部恭男早稲田大学教授(憲法)が「憲法違反」と断言し、政府に衝撃を与えました。阪田雅裕元内閣法制局長官は、政府がホルムズ海峡の機雷掃海を実例に挙げていることについて「わが国の重要な利益を守るために必要があると判断すれば集団的自衛権を行使できると言っているのに等しい。そうだとすると、到底、従来の政府の(憲法)解釈の基本的な論理の枠内とは言えなくなる」と指摘しました。戦争法案と憲法9条が両立しないのは明白です。
世論を広げ追い詰める
政府の説明は完全に破綻しており、数の力で押し通すことなど絶対に許されません。法案に反対する声と運動は、学者、法曹界、若者、女性、地域などで大きく広がっています。反対世論を急速に広げ、安倍政権を追い詰めることが重要です。