2015年7月8日(水)
主張
集団的自衛権行使
先制攻撃参戦こそ現実の危険
安倍晋三政権が今国会での成立を狙う戦争法案に対し、「違憲」「反対」とする国民の声が日増しに大きくなっています。政府・与党は「法案は抑止力を高め、日本の平和と安全を維持するのに不可欠」などと弁明に必死ですが、マスメディアの世論調査でもそう思わないという声が多数です。法案が、日本は武力攻撃を受けていないのに、米国が海外で始める戦争に集団的自衛権を発動して参戦し、武力を行使する危険な本質を持っているからです。国民の反対世論を無視し、与党が数の力で法案を押し通すことは許されません。
時の政権の裁量任せ
「法案が成立すれば、日本が外国から武力攻撃を受けることを防ぐ力、いわゆる抑止力が高まると思いますか」との問いに対し、「そうは思わない」が52%―。「読売」6日付の世論調査です。
同調査では、政府の説明そのままに「法案は、日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を強化するために、自衛隊の活動を拡大するもの」とした上でその賛否を聞いた質問でも「反対」が50%で「賛成」36%を上回りました。
「抑止力を高める」「日本の平和と安全のため」という政府・与党の主張に、多くの国民が納得していないことを示すものです。
政府・与党は、北朝鮮の核開発や弾道ミサイルの問題を持ち出して国民を脅し、集団的自衛権の行使を可能にした戦争法案の正当化を図ろうとしています。しかし、北朝鮮の核・ミサイル問題は、外交手段で解決する努力が何より求められています。軍事態勢の強化で対応しようとすれば相手はさらに軍事力の増強を加速させ、“軍事対軍事”の危険な悪循環に陥ることは明らかです。
しかも、集団的自衛権の行使とは、日本が武力攻撃されていないのに、他国に対する武力攻撃を排除するため武力を行使することです。元内閣法制局長官の阪田雅裕氏は「集団的自衛権を行使するということは、進んで戦争に参加するということだから、敵となる相手国にわが国領土を攻撃する大義名分を与えるということでもある」「国民を守るというよりは、進んで国民を危険にさらすという結果しかもたらさない」と指摘しています(6月22日、衆院安保法制特別委員会)。政府・与党の主張に国民が納得しないのは当然です。
集団的自衛権の行使を盛り込んだ戦争法案の最大の問題は、他国に対する武力攻撃の発生によって日本の存立が脅かされる明白な危険がある場合など武力行使の「新3要件」を満たしているかどうかの判断が、時の政権の裁量に任され、無限定だということです。
採決の強行許さない
米国がベトナムやイラクへの侵略戦争のような無法な先制攻撃の戦争を仕掛けた際、戦後一度も米国の戦争に反対したことのない日本が、米国の言われるままに集団的自衛権を発動し、武力を行使することになる―。日本共産党がこの間の国会論戦で明らかにしてきたように、ここにこそ、集団的自衛権行使の最も現実的な危険があります。
与党内では、来週にも衆院安保法制特別委員会での法案採決を強行する動きが出ており、事態は緊迫しています。採決強行を許さない世論と運動を一層大きくすることが重要です。