2015年7月26日(日)
農協「改革」法案 問題明らか
農林漁業者中心の根本危うく
農業協同組合(農協)など農業組織を事実上の解体に導く農協「改革」法案の審議が参院で始まっています。衆院も含む国会審議を通じ、「農家所得の向上」という政府の口実は崩壊。「農業の成長産業化」と称して日米財界の要求に応え、農協系金融を市場開放するとともに、企業の農業参入を拡大し農地所有に道を開くものであることを浮き彫りにしました。
■所得増えない
日本共産党の紙智子議員は14日の参院農林水産委員会で、今回の農協「改革」で、なぜ農家の所得が増えるのか政府に迫りました。
農水省は「6次産業化」や輸出の拡大を推進することで所得を増やすとしています。しかし、輸出の多くを占めるのは水産物であり加工品です。紙氏は輸出をいくら増やしても農家の取り分は少なく、所得増には結びつかないと主張しました。
これに対し、林芳正農水相は「農業全体の所得を増やす」と答えるだけで、農家の所得が増える具体的な道筋はなんら示すことはできませんでした。
法案は現行の農協法の「営利を目的としてはならない」との規定を削除し、農協が株式会社を選択できる規定を設けるなど協同組合としての農協の性格を大きく変えるものです。
衆院の審議でこの問題を取り上げた斉藤和子議員は、農協が株式会社化されれば、営利が優先され、現在赤字の営農指導は真っ先に切り捨ての対象になると指摘。オーストラリアでは日本の農協と同様の農業組織が株式会社化された1カ月後に巨大穀物企業に売り払われてしまった事例をあげ、株式会社化は農家の利益にならないと主張しました。
法案は農協経営の健全性を保ってきた全中(全国農協中央会)による監査を廃止します。これは農産物の販売や購買という経済事業と信用・共済事業を一体で取り組んできた総合農協を解体するものです。5月14日の衆院本会議で畠山和也議員が指摘したように、総合農協から信用と共済を分離せよと要求しているのはアメリカの経済界にほかなりません。
■企業参入進む
法案はまた、農地法を一部改定し、農地所有の法人の要件緩和を進めようとしています。これは財界の要求に応え企業による農業や農地への参入を進めるものであり、「株式会社化」と軌を一にした問題です。
畠山氏は6月の衆院農林水産委員会で、この問題を取り上げ、参考人質疑や地方公聴会であがった不安の声を示し、「農地の所有は農林漁業者が中心という根本を危うくするもの」と批判しました。