2015年9月7日(月)
NHK日曜討論 井上議員の発言
27日の国会会期末まで3週間となった6日、NHK「日曜討論」で戦争法案について10党の参院議員が議論しました。日本共産党の井上哲士議員は「憲法違反の戦争法案は廃案しかない」と主張しました。
理解が進むほど国民は反対 自衛隊暴走にも不安広がる
司会者から、戦争法案に対する国民の理解について問われた自民党の佐藤正久・国防部会長は「十分ではない」と述べつつ、「政府は問題点にしっかり答えている」と強調しました。井上氏は自衛隊の内部文書を暴露した共産党の質問にもふれながら、こう答えました。
井上 12万人の(8月30日の)国会前集会、私も参加しましたけど、ものすごい熱気でした。理解が進めば進むほど国民の反対の声が広がっている。そして、学生・若者、ママたち、学者など、いてもたってもいられないという行動が広がっているのが現状だ。それに加えて、アメリカ軍と一体となった自衛隊の暴走にも不安の声が広がっています。先週、私たちは自衛隊トップの(河野克俊統合幕僚長の)昨年末の訪米記録の内部文書を明らかにしましたけど、総選挙直後、まだ与党協議も始まっていないのに「夏までに法案が成立する」とか、沖縄知事選の結果にかかわらず新基地建設するとかを表明している。これは驚くべき内容だ。この問題の究明は法案審議にとっても不可欠であり、この点でもさらに審議が必要です。
軍事的な悪循環起こすより9条に基づく平和外交こそ
戦争法案の必要性について、与党側は中国、北朝鮮「脅威」論を前面に出してきました。井上氏は憲法に基づく平和外交の重要性をのべました。
井上 参院の審議に入って、与党側から中国脅威論をあおる質問が相次ぎました。共産党の議員が日中はお互い貿易最大相手国であることをあげ、(岸田文雄)外相に「中国は脅威か」と聞くと、「脅威とは考えていない」と答弁しました。脅威があるから法律ではなくて、むしろ法案を通すために脅威をあおっている。私たちは軍事的な悪循環を起こすようなやり方ではなくて、憲法9条にもとづく平和の外交こそがこの問題の対案だと考えています。
存立危機事態 要件あいまい 元最高裁長官も「違憲」と批判
集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」の要件について、政府が繰り返しあげてきた「日本近海で邦人輸送中の米艦防護」という事例が成り立たなくなっている問題が議論になりました。自民党の佐藤氏は「国民が犠牲になるまで守ることができなくていいのかという安倍首相の問題意識を示したものだ」と述べ、現実性のない観念的な事例であることを事実上、認めました。井上氏は、こう批判しました。
井上 国会での議論で、総合的判断という言葉がありましたが、結局(要件が)あいまいで政府の判断にゆだねられるものだということが浮き彫りになりましたね。もともと総理が具体例としてあげてきた米艦防護の例もそうですし、ホルムズ海峡の機雷掃海の件も、およそ立法事実として成り立たなくなってきていますよ。もともと集団的自衛権は「他国防衛」であり、憲法違反なのに、限定的なら許されるという解釈改憲をするためにこの「存立危機事態」という考えをむりやりつくった。だからこそ、いろんな問題がでてきていると思います。それに対して憲法学者が声をあげてきましたけど、ついに、元最高裁長官の山口(繁)さんも違憲だと述べました。(集団的自衛権の行使が憲法上許されないとした)「72年見解」の枠のなかで、行使できるというのは論理矛盾でありナンセンスだと、ここまでいわれています。政府は最高裁こそ憲法の番人だといってきましたが、その元長官がここまで言われているわけですから、私はこういう法案は廃案しかないと思います。
「(存立危機事態での武力行使は)必要最小限の武力行使という憲法の精神にのっとったもの」との佐藤氏の発言に、井上氏は反論しました。
井上 日本が攻められていないのに、他国に対する武力攻撃を排除するわけですから、必然的に海外派兵につながってくる。総理は「一般に海外派兵は憲法上禁止されている」と言いますが、それは法案に明記されていません。そして、一般ですから例外はあると。それは政府が判断をするわけですから、実際上は歯止めがありません。先日(8月12日)、沖縄で米軍のヘリが墜落する事故がありました。アメリカの特殊作戦部隊に日本の自衛隊の特殊作戦部隊が「研修」と称して、ヘリに乗っていたことが明らかになりました。イラク戦争やビンラディン殺害事件など、国際法違反の作戦に参加していたような特殊作戦部隊との訓練が行われている。これはまさに「専守防衛」と相いれないことを示していると思います。
非人道的兵器も輸送可能の危険なフリーハンド与える
戦争法案では、従来の海外派兵法で「非戦闘地域」に限っていた自衛隊の活動範囲を「戦闘地域」まで広げ、武器の輸送や非人道兵器を含む弾薬の輸送、提供ができるようになります。
井上 もともと輸送などの兵たん活動は武力行使と一体不可分なのに、政府は「後方支援」という名前に変えて、他国の武力行使と一体でなければいいんだという、国際法で通用しない主張をしてきました。しかも、今回支援内容が大きく拡大します。私は(国会で)輸送の問題を質問しました。クラスター弾や劣化ウラン弾、これは在日米軍も保有していますが、この輸送ができるのかと聞くと、法律上はできるという答弁でした。その後、批判が広がり、輸送も含めて考えてないという答弁に変えました。しかし私の質問には、移譲、つまり譲り受けに当たらない形であれば輸送は条約上否定されないと答えているのです。結局、時の政府の判断でこういう非人道的兵器も輸送できるようにする、危険なフリーハンドを与えることは絶対あってはならないと思います。
違憲の法案は修正ではなく廃案にする以外にない
今国会の成立について、自民党の佐藤氏は「国会の会期内に結論を出していきたい」と表明。井上氏は「廃案しかない」と強調しました。
井上 憲法違反の法案ですから、対案とか修正ではなくて、私たちは廃案だと考えています。(法案修正で)国会の関与を強めることはどの問題でも大事だと思いますが、この法案も衆議院であれだけ国民の反対の声があったのに与党が多数で強行しましたから、国会だけで歯止めになるのかと。もともと、国会が多数で決めたとしても、これはやってはいけないよというたがをはめているのが憲法です。憲法違反の法案をつくらせないということが、なによりもいま大事なことであり、廃案しかないと思っています。