2015年9月11日(金)
反論不能の与党、採決論外
戦争法案に批判、ごう音たて拡大
20日からの大型連休前を事実上の国会会期末とみて、来週16日に戦争法案の委員会採決強行との構えを強める安倍政権と自民、公明の与党。それと対決する国会周辺・全国で取り組まれた8月30日の戦争法案廃案を求める大行動、9月6日の新宿ホコ天大宣伝など、国民の批判は日を追うごとにごう音のように拡大しています。世論調査でも、政府の法案についての説明が不十分という声は83%にもなっています(JNN調査7日)。
こうした国民の声から逃げるように採決を急ぐ姿は、とても「1強」「巨大与党」などではありません。
元最高裁長官の山口繁氏は各紙のインタビューで、戦争法案について「違憲」と断じました。山口氏の公然とした発言は、「憲法の番人は憲法学者ではなく、最高裁だ」として砂川事件最高裁判決(1959年)を持ち出し戦争法案を「合憲」の根拠と主張する自民党の高村正彦副総裁への痛烈な批判となっています。ところが、これを中谷元・防衛相は「現役を引退した一私人の発言」と切り捨てました。当の高村氏は「(国民に)十分に理解が得られていなくとも決めないといけない」と世論に八つ当たり。もはや、「反論不能」と認めたのも同然で、戦争法案の違憲性は完全に決着しました。
自民党参院議員の一人は、「安保の審議中であることを『理由』に8月は多くの参院議員は地元に戻っていない。帰ればこの問題で袋叩きにあうからだ」とこぼします。
8日の参院安保法制特別委員会で、15日の中央公聴会開催を突如提案、議決を強行した自民、公明の与党理事らは、厳しく抗議する野党議員に対し、顔面蒼白(そうはく)のまま一言も反論できず立ちすくみました。その表情にまったく光はありません。
河野克俊統合幕僚長の国会招致問題でも、与党は無回答のまま、うやむやにしようとしています。本来、“軍事組織”が国会のコントロールを無視して暴走するという民主主義の危機に、与野党超えて厳正に対処することが求められます。あいまいにするなら法案審議の前提が崩壊します。
メディア関係者の一人は「これ以上審議を続けて、また共産党から内部資料が出てきたら完全に行き詰まる。自民党と政府は、民主党ではなく共産党に自衛隊から、資料が行ったことに衝撃を受けている。これ以上やられたらもたないと採決を急いでいる」と指摘します。
“邦人輸送の米艦防護”という安倍首相自ら示した集団的自衛権行使の根拠事例も、中谷防衛相の答弁で崩壊しました。自民党議員からも「答弁が二転三転と動揺しすぎだ。これでは国民は理解できない」、「もう無理をせず臨時国会に先送りするべきだ。一国会でやることは無理だ」という声も漏れます。
「議論が深まった」などと述べているのは安倍首相とその周辺だけです。16日の採決など論外です。
(中祖寅一)