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2015年9月15日(火)

NHKスペシャル 緊急生討論 志位委員長の発言

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 日本共産党の志位和夫委員長は、13日夜放送の「NHKスペシャル 緊急生討論」に出演し、政府・与党が今週にも採決強行を狙う戦争法案について、与野党代表と討論しました。戦争法案をめぐる党首・幹部らのNHK討論は、5月3日、7月4日に続いて3回目です。

国会審議は尽くされたか?

憲法違反、国民の理解得られず、自衛隊中枢の暴走――三つの問題がはっきりした

 番組では、司会の島田敏男解説委員が「国民の理解を得る努力、国会の議論が尽くされてきたと思うか」と質問。自民党の高村正彦副総裁は「議論が完全に尽くされることはないが、だいぶ議論は熟してきた」、公明党の北側一雄副代表も「衆参で200時間審議をやり、論点も出尽くしている」と、あくまで成立させる立場に固執しました。これに対し、志位氏は次のように述べました。

 志位 3カ月の(衆参の国会)審議をつうじて、私は、三つの点がはっきりしたと思います。

 第一は、安保法案=戦争法案が憲法違反だということです。圧倒的多数の憲法学者、内閣法制局の元長官につづいて、最高裁長官を務められた山口(繁)さんが「憲法違反だ」と断じた。「合憲か、違憲か」という論争はもう決着がついたと(思います)。

 第二に、ついに安倍政権は国民の理解を得ることができなかった。直近のどの(世論)調査を見ても、6割以上が「今国会での成立に反対」と答えている。これに対して高村さんは、“理解を得られなくても成立をはかる”とおっしゃったけれど、あまりに傲慢(ごうまん)な態度だと私は思います。

 そして第三に、自衛隊の中枢の暴走ということが内部文書で明らかになってきた。

 これだけ問題点が噴き出してきたわけですから、私は、この戦争法案は廃案にするしかないと強く求めたいと思います。

法案を強行した後で審判を仰げばいいというのは順番が逆

 この発言について、志位氏と高村氏でつぎのようなやりとりになりました。

 高村 志位さんは傲慢な態度だと(言った)。国民の理解が必ずしも十分じゃなくても、採決しなければならないときはある。それが次の選挙で理解が得られなければ政権を失う。これがまさに民主主義だと。

 志位 それは順番が逆じゃないですか。本当に(戦争法案の)成立が必要だというんだったら、(衆院を)解散して審判をあおいだらいい。(法案成立を)やったあとで、あとで審判を仰げばいいなんて。

 高村 3回の(衆参の国政)選挙で、公約してやったんですよ。

 志位 この前は「アベノミクス」で(総選挙を)やったでしょう。

 高村 国政全部ですよ。

 志位 (首相は)それ(「アベノミクス」)で選挙をやったじゃないですか。

 司会の島田氏は「いまの志位さんのご指摘であった、理解が十分得られてない段階でも前に進むというのは、7月のこの番組でも高村さんはおっしゃったのを僕は覚えています」とコメントしました。

 他の野党は「国会で廃案にすべきだということで議論が尽くされた」(民主党・岡田克也代表)、「これだけ審議をしてもいまだに6割の人が反対している。国民の理解を得られていない」(維新の党・松野頼久代表)と発言しました。

何のための集団的自衛権か?

“日本人の命を守る”ためでなく、米軍と自衛隊が世界的規模で一緒に戦争するため

 これまでの政府の憲法解釈を百八十度覆した集団的自衛権の行使容認。国会審議で政府があげた具体的事例や要件について、それだけに限定されず、「総合的に判断する」と答弁していることが紹介されました。

 民主党の岡田氏は「戦争を始める要件が総合的な判断で政府に任せろといわれてもそれはできない」と主張。高村氏が「(行使の要件は法案に)厳格に書き込まれている」などと発言したことに、志位氏は次のように述べました。

 志位 政府は、集団的自衛権というのは“あくまでも日本人の命を守るためのものだ”といって、その事例として、二つを繰り返してきたわけです。

 一つは、「邦人を輸送する米艦の防護」とずっと言ってきたわけですが、しかし、(首相は)“日本人が乗っていなくても、集団的自衛権の行使はありうる”と、最近になって言い出した。

 もう一つは、「ホルムズ海峡の機雷掃海」ですが、これも当のイラン(政府)が「そんなこと(機雷敷設)はありえない」というなかで、(首相は)最近になって、“特定の国を想定しているわけじゃない”と言い出した。

 つまり、“日本人の命を守るため”とあれだけ繰り返してきた事例は破たんしてきている。

 そうなっていきますと、集団的自衛権の行使の目的というのは、“日本人の命を守る”ことじゃない。米軍と自衛隊が世界的規模で一緒になって戦争することだと。これがはっきりしたというのが、国会論戦の到達点だと思います。

「抑止力」でバラ色になるか?

集団的自衛権行使は事実上の先制攻撃、相手の攻撃を呼び込み、国民を進んで危険にさらす

 集団的自衛権の行使にかんして自民・高村氏は、「北朝鮮という国が、実際にやる前の抑止力として必要だ。万万が一起こってはいけない。われわれはしっかり抑止力をもたなきゃいけない」と、何度も戦争法案による「抑止力」を強調。これに対し志位氏は次のように述べました。

 志位 高村さんは、(集団的自衛権行使容認で)「抑止力」を強くすればバラ色になるかのようなこと発言されますが、大森(政輔)元内閣法制局長官が、(9月)8日の(参院安保特別委員会の)参考人質疑でこう言っているんですね。

 「わが国が集団的自衛権の行使として……第三国に武力攻撃の矛先を向けますと、その第三国は、……わが国に対して攻撃の矛先を向けてくることは必定であり、集団的自衛権の抑止力以上に紛争に巻き込まれる危険を覚悟しなければならず、バラ色の局面到来は到底期待できない」

 つまり、集団的自衛権の行使というのは、わが国に対して武力攻撃をしていない国に対して、日本の側から武力の行使をすることになる。それは、相手国からみれば、事実上の問題として、日本による先制攻撃になる。相手国に、日本を攻撃する大義名分を与えることになる。ですから、国民の命を守るというよりも、進んで危険にさらす。ここに集団的自衛権の本質があると言わなければなりません。

「法律の専門家であっても、安全保障の専門家ではない」という非難に対して

 これに対し高村氏は「大森さんは法律の専門家ではあっても、安全保障の専門家では全然ない」などと主張。志位氏はこう批判しました。

 志位 大森さんは論理の問題としてそうなる(と言っている)。つまり、集団的自衛権というのは事実の問題として先制攻撃になる。仮に、国際法上、(集団的自衛権の行使として)違法性が阻却されるとしても、事実上の先制攻撃になれば、相手からの攻撃を呼び込むじゃないか、結局、紛争を呼び込んでしまうことになるじゃないか、こういう論理の問題としておっしゃっている。

 これに関して岡田氏も「北朝鮮が手を出していないときに、日本が米艦の防護ということで北朝鮮に武力行使をすると、そうなれば、日本にミサイルが飛んでくる可能性はそれだけ高まるというのは、だれが考えてもそうなるじゃないですか」と批判しました。

自衛隊の活動拡大でどうなる?

「非戦闘地域」の枠組みの撤廃――憲法違反の武力の行使そのものになる

 戦争法案は、従来の「非戦闘地域」の枠組みを撤廃、自衛隊が「戦闘地域」にまで行って米軍などへの「後方支援」=兵たんを行うことを可能にします。自民・高村氏は「防衛大臣に、安全確保義務で『戦闘が見込まれない地域(を指定する)』と定めているから、(危険性は)それほど高まらない」と述べました。これに対し志位氏は次のように批判、公明・北側氏を相手にやりとりになりました。

 志位 高村さん、7月(の討論番組)と同じことを言いましたね。「戦闘が見込まれない地域」を定めるんだというふうにおっしゃったけど、そんなこと、法案に書いてないんですよ。

 国会で私たちは聞きましたけれども、法案に書いてあるのは「(部隊による活動が)円滑かつ安全に実施することができるように実施区域を指定する」(国際平和支援法7条3)と。「それ以上の安全規定については法案の記述はございません」(中谷防衛相)と答弁しているんですね。

 これまでは少なくとも「非戦闘地域」という歯止めがありました。現に戦闘が行われていないだけではなくて、自衛隊の活動期間中に戦闘が行われない、これがきちんと認定できる地域と(いう枠組みだった)。こうであったとしても、イラク(自衛隊派兵)の実際は危なかったわけですね。

 ところがこのいわば「二線」を引いていたのを、「一線」にしてしまったら、いつでも(相手方の)攻撃の対象になる。「攻撃されたらどうするのか」と私が国会で聞きますと、(首相は)「武器の使用をする」と(答弁した)。そうしますとこれは戦闘になるわけですよ。これはまさに憲法9条が禁止した武力の行使そのものだと。これは憲法違反です。

「戦闘が見込まれない場所」など法文にはない――ごまかしは許されない

 北側 国会で、戦闘が発生しないと見込まれる場所を指定する、と答弁しているんです。ですから、実態的には何ら変わりがないんです。

 志位 それは答弁の話であって、法文にないんですよ。これまで、そういう戦闘行為が起こらない地域ということで「非戦闘地域」と言ってたものを、外してしまったわけですよ。外してしまっておいて「変わらない」っていうのは、こんなごまかしはありません。

 北側 憲法の問題と、安全確保の問題とをたてわけて議論してるんです。

 志位 憲法上もこれは憲法違反になるわけですけども、安全確保という点でも、これまであった「非戦闘地域」という歯止めを外したら、飛躍的に危険が高まるのは当たり前ではないですか。

活動内容がどう変わる?

戦闘に向かう航空機への給油も可能に――「武力行使ではない」など絶対に通らない

 戦争法案による自衛隊の「後方支援」=兵たんは、武器・弾薬の輸送、弾薬の提供を可能にするなど、活動内容も大きく広がることが国会審議で明らかになりました。「リスクは当然高まるのでは」との島田氏の問いかけに、自民・高村氏は「いや、変わらない。日本の平和と安全に重要な影響を与える事態のとき、動いてくれるところにお手伝いをするのは当たり前のことだ」と発言。志位氏は次のように発言しました。

 志位 「非戦闘地域」という歯止めが外れるだけではなくて、活動内容という点でも、武器・弾薬の輸送、そして弾薬の補給ができるようになる。くわえて、戦闘作戦(行動)のための発進準備中の航空機に対する給油ができるようになるんですよ。

 (資料を掲げて)これは、海上自衛隊が作った(重要影響事態と国際平和共同対処事態の際の実際の運用を踏まえた)イメージ図ですが、米軍ヘリが敵潜水艦を攻撃し、このヘリが海上自衛隊のヘリ空母に来て給油をして、また攻撃する。これを繰り返しやる。これができますか、と聞きましたら(政府は)「可能だ」というんですよ。これは、まさに一緒になって戦争をするという以外の何ものでもないですよ。これをやっておいて、これは武力の行使とは別ですということは絶対に通りませんよ。

 まさに活動内容という点でも、武器・弾薬の輸送だけでなく、こういう給油の活動、これは(大森)元内閣法制局長官が、国会での証言(9月8日の参院安保特別委員会の参考人質疑)で、“これはもう憲法違反だから、やめるべきだと、何度も何度も、当時の政府に、周辺事態法のときにいった話だ”と(述べている)。憲法違反そのものです。

米国の「ニーズ」の有無の問題ではない――憲法違反になると法制局として言い続けた

 この発言について、志位氏と高村氏でつぎのようなやりとりになりました。

 高村 大森さんは、当時、「これはアメリカからの要求がないということで、検討しなかったものでございます」と、そういうふうに答弁していました。

 志位 (大森氏は)最後は、(アメリカからの)ニーズ(がない)ということで納めたんだけれども、法制局としては、参事官を通して、繰り返し、繰り返し、これは憲法違反になるということを、政府に言っていたという証言を、8日にされました。この証言は非常に重いですよ。

 高村 彼は、そのように思いますといっている。

 志位 参事官から「報告を受けた」とおっしゃっている。

自衛隊中枢の暴走

「(安保法制は)来年夏までには終了する」と米側に約束――統幕長の国会招致を求める

 自衛隊の活動拡大に関して志位氏は、「どうしてもいっておきたい問題がある」として、日本共産党が国会質問で繰り返し追及してきた、統合幕僚監部の内部文書で明らかにされた自衛隊中枢の暴走問題について取り上げました。

 志位 一つ、ここでどうしても言っておきたい問題があります。自衛隊の活動の拡大ということがいわれている。その自衛隊が、国民と国会を無視して暴走しているという問題があるんですよ。

 (内部文書を示して)ここにも、今日、持ってまいりましたけれども、河野(克俊)統幕長が去年12月に訪米して、米軍の幹部と会談した会談録です。「安保法制について予定通りに進んでいるか」と米側に問われて、「来年夏までには終了するものと考えている」と(答えている)。これは去年の12月17日ですよ。総選挙の投票日の3日後ですよ。第3次安倍政権が誕生する1週間前ですよ。

 この段階で、アメリカにこういう約束をしている。これは大問題ではないですか。幕僚長の国会招致が必要だと思いますが、いかがですか。

「『見込み』を言っただけで『約束』ではない」(高村氏)――会談録を事実上認める

  この発言を受けて志位氏と高村氏との間で激しいやりとりに。民主・岡田氏も高村氏に批判を加える場面となりました。

 高村 何にも約束していないでしょ。見込みを聞かれて、見込みを言っただけでしょ。

 志位 事実上の約束です。

 高村 何の約束もしていないでしょ。

 志位 事実上の約束です。

 高村 約束できる立場ではないですよ。

 志位 「来年の夏までに終了する」と。これを約束しているんです。

 高村 見込みを言っているだけです。

 岡田 そうおっしゃるんなら公電を出してくださいよ。公電あるはずでしょ。

 高村 じゃあそれは、委員会なりで要求してくださいよ。

 志位 そういうことをおっしゃるんでしたら、ちゃんとこの文書を出してください。国会に。国会に出していないんですよ。

 岡田 そうだ。

 高村 だから、そうじゃない。約束しているという言葉じゃない。

 志位 相手に問われて、どうなってるんだ、ちゃんとできるかといわれて、夏までに終了させると、これはもう約束です。

 高村 させるではない。終了すると考えていると読んだじゃないですか。もう一回読んでください。

 志位 「終了すると考えている」と、そういうふうに答えれば約束そのものですよ。

 高村 なんで約束ですか。約束できる立場ではない。

 志位 相手からそういうふうに問われている。

 岡田 だから出してくださいよ。

 志位 約束できる立場でないものが約束しているというのは、「軍の暴走」なんです。

 政府は、この会談録について、「同一文書の存在は確認できなかった」として事実関係を認めず、真相を隠し続ける態度をとっています。ところが、このやりとりを通じて、高村氏は、「『見込み』を言っただけで『約束』ではない」と「反論」しただけで、会談録に記載されたことが事実だということを事実上認めてしまっています。

 重要影響事態法について、維新・松野氏は「(危険性が)まったく変わらないのであれば、なんで地理的概念を外したんですか」と主張。高村氏は「外したも外さないもない。地理的概念だと誤解している人がたくさんいる」と発言しました。これに対し岡田氏が「インド洋や中東までいかないといっているでしょ」と述べ、志位氏は「(当時政府は)地球の裏側には行けないと答えていますよ」と指摘しました。

今後の審議・採決にどうのぞむ?

野党が結束し、かつてない国民運動と力をあわせ、必ず廃案に

 与党側は、週内に参院での採決に踏み切る構えをみせました。民主・岡田氏は「野党は協力して、あらゆる手段を使って、採決を阻止していく、そのことを確認した」、維新・松野氏も「憲法違反の法案を衆議院では強行採決をすでにしているから、その状態ではとても認められないという立場だ」と発言。志位氏は次のように述べました。

 志位 野党7党(6党・1会派)で法案の成立を阻止するために、あらゆる手段を行使して結束してたたかうということを、この間の党首会談で確認したことは、たいへんに大事だと思っております。野党の結束したたたかいで阻止したいと思います。

 同時に、国会を取り巻く国民の声に耳を傾ける必要がある。日本列島津々浦々で、燎(りょう)原(げん)の火のように、かつてない国民運動が起こっている。その中で若い人たちが声をあげて立ちあがっているというのは、日本の未来にとって本当に大きな希望だと私たちは思います。今週はずっと連日のように国会抗議行動が取り組まれますから、ぜひ国会を包囲して、その力で、院内外の力を合わせて、必ず廃案に追い込みたいと決意しております。

公聴会の直後に採決など国会のルール違反――公聴会を受けて審議を続けるべきだ

 自民・高村氏は「あらゆる手段とは何だろうと思っているが、なんでもやる。ゲバ棒を持ってきてやるなんていうことはわれわれは言いませんけど、そこまでやらないだろうと思いますが」などと発言。志位氏は次のように述べました。

 志位 先ほど高村さんが、野党があらゆる手段をつかうということについて、どういう手段なんだということをおっしゃっておられました。私たちは、もちろん暴力なんかとんでもありません。物理的な行為でどうこうすることを考えているわけじゃない。

 ただ言っておきたいのは、15日に中央公聴会、16日に地方公聴会でしょう。公聴会というのは国民から広く意見を聞いて、審議を充実させると、そのためにやるんですよ。その直後に採決というのは、これは国会のルール違反ですよ。なんのために公聴会やるのか(ということになる)。

 公聴会とセットで採決日程を出してくるというのは、本当に暴挙であって、公聴会に来て下さる方への失礼極まりない態度だと思うんですよ。ですからこういうやり方は絶対にやめるべきだと。きちっと審議を続けるべきだと思います。


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