2015年9月27日(日)
主張
「新3本の矢」
絵空事で国民はごまかせない
自民党総裁に再選された安倍晋三首相が、今後3年間の経済政策の目標として「新3本の矢」を持ち出しています。「アベノミクスの第2ステージ」を「ニッポン1億総活躍プラン」と銘打ち、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」をめざすというものです。「国内総生産(GDP)600兆円」などの目標を掲げますが、実現のための政策も裏付けもありません。いわば夢のような絵空事で戦争法の強行や消費税の増税に対する国民の批判をごまかそうとしてもそれは不可能です。
アベノミクス破綻の証明
安倍首相が「新3本の矢」なる政策を持ち出してきたのは突然でした。総裁に再選された自民党両院議員総会の後の記者会見です。首相はいわば独演会のようにまくし立てたあと、翌日の国会閉幕にあたっての記者会見でも「新3本の矢」の説明を繰り返しました。10月初めの内閣改造で担当大臣もおくという前のめりです。
首相は「新3本の矢」を政権復帰以来取り組んできた経済政策「アベノミクス」の「第2ステージ」だといいます。しかし、大胆な金融政策と機動的な財政出動、規制緩和などの成長戦略を「3本の矢」としてきた政策とどうつながるのかもまったく説明はありません。もっとも重視していた「成長戦略」は言葉もなくなりました。
首相は「アベノミクス」の成果を自賛しますが、異常な円安と物価上昇、大企業減税と消費税増税、雇用や農業の規制緩和などで日本経済と国民の暮らしはズタズタにされてきました。大企業の利益は記録的な増加を見せても労働者の所得や雇用は改善せず、消費の拡大も鈍いままで、「アベノミクス」で経済を再生させるという計画は完全に行き詰まっています。破綻した「アベノミクス」の装いをいくら変えても、国民に明るい未来を約束することはできません。
端的なのは首相が「600兆円」をめざすというGDPです。現在のGDPは約500兆円ですが、総裁任期中の3年間に600兆円に近づけようとすれば5%を超す高い成長が必要になります。現実には昨年の消費税増税のあとGDPはマイナス成長を続け、今年4〜6月期にもマイナスに転落しました。個人消費の落ち込みが大きく、その背景には賃金や雇用の改善の遅れがあります。大企業優先政治を続ける限り、「アベノミクス」を加速すればするほど、経済とくらしは破綻してしまいます。
「新3本の矢」で持ち出している出生率「1・8」の回復や「介護離職ゼロ」などの目標も実現の保証のない“絵に描いた餅”です。非正規雇用を増やし、産みたくても産めない社会にしておいて何が出生率上昇か。絵空事でだますのは国民愚ろうのきわみです。
安倍政権打倒が急務
戦争法の強行で国会の中でも外でも批判の声に圧倒される中、戦争法強行への批判を「レッテル貼りで根拠のない不安をあおる」などと切り捨てる安倍首相には国民の声に耳を傾ける姿勢はありません。安倍首相が経済政策で批判をそらそうとすること自体、主権者である国民をバカにしています。
安倍政権には政権担当の資格がありません。国民に背を向ける安倍政権を打倒し、戦争法廃止の国民連合政府の樹立が急務です。