2015年9月30日(水)
地位協定 基地調査は米軍次第
日米政府 新環境協定に署名
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岸田文雄外相とカーター米国防長官は28日午後(日本時間29日未明)、ワシントンで会談し、在日米軍の特権を定めた日米地位協定を補足する形で、在日米軍基地内の環境調査に関する新協定(環境補足協定)に署名しました。
新協定は、(1)米軍基地内で環境に影響を及ぼす事故が発生した場合(2)基地返還に関する現地調査(文化財調査を含む)―において、自治体の立ち入りを認めることなどが柱です。
新協定にかかわる日米合同委員会合意によると、立ち入り調査を求める自治体の申請について、米軍は「妥当な考慮を払う」とされているのみで、調査受け入れの義務は負いません。さらに、申請を認めることが「軍の運用を妨げるか」などを判断し、「(調査が)実行可能な限り速やかに回答する」とするなど、あくまでも米軍の裁量次第です。
日本側は、汚染された水や土壌などのサンプル採取の申請もできますが、申請が認められた場合でも、サンプル採取は、米軍の措置や運用を妨げない方法によってのみ可能とされています。
基地返還に先立つ調査についても、日本側が調査に入れるのは、「返還日の150労働日前を超えない範囲」とされ、休日を含めると約7カ月前からに限られます。沖縄県が求める「少なくとも返還の3年前までの立ち入り」からは程遠いものです。
解説
結局は米軍の“好意”頼み
地位協定抜本改定こそ
枯れ葉剤に汚染されたドラム缶の埋設など、在日米軍基地での環境汚染が頻発し、基地を抱える全国の自治体などから基地内への立ち入りを求める要望が相次いでいます。
しかし、米軍基地の排他的管理権を定めている日米地位協定3条で、自治体の自由な立ち入りは認められてきませんでした。
今回の新協定では、環境汚染調査のための立ち入りを認めていますが、あくまでも地位協定を補足するものであり、最大の障害である地位協定には指一本も触れていません。
同じ米国の同盟国であるドイツやイタリアでは、国内の基地の管理権はその国の政府が持ち、いつでも自由に立ち入りできることと比べ、大きな違いがあります。
求められているのは、新協定のような米軍の好意に頼った協定ではなく、日米地位協定の抜本改定にほかなりません。
沖縄県名護市辺野古への新基地建設に向けた埋め立て許可を、翁長雄志知事が取り消す動きを強めるなか、新協定の締結は、日米両政府が沖縄の「負担軽減」に取り組むポーズを示し、新基地への理解を促す狙いが見えます。
岸田氏は、新協定の締結について「歴史的意義を有する」と強調しました。実質は米軍の“好意頼み”でしかなく、沖縄県民の期待を裏切るものです。
(山田英明)