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2015年10月2日(金)

「GDP600兆円」 早くも赤信号

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 安倍首相が戦争法批判回避のために「経済最優先」を打ち出していますが、その足元からつまずく結果となりました。 (金子豊弘、杉本恒如)


企業利益上昇も賃金低迷

 日銀短観で企業の景況感の代表的指標である大企業製造業が悪化した直接の原因は、中国などの新興国の減速です。業種別では全16業種中、前回6月調査より悪化したのが11業種にのぼりました。中国経済が減速した影響が見られる「はん用機械」(9ポイント悪化)、「業務用機械」(6ポイント悪化)、「生産用機械」(5ポイント悪化)などが全体を押し下げました。

 経済産業省が9月30日に発表した8月の鉱工業生産指数(季節調整値、2010年=100)は、前月比0・5%低下の97・0。2カ月連続のマイナスになりました。同省は、生産の基調判断を「一進一退」から「弱含み」に下方修正しました。市場関係者からは、国内総生産(GDP)成長率が「4〜6月期に続き、7〜9月期も2期連続でマイナスになり不況入りだ」との指摘が出ています。

 大企業の海外頼みは、国内需要が低迷しているからです。円安によって大企業の利益は過去最高を記録する一方で賃金が低迷しています。安倍首相がいうGDP600兆円目標の実現には、早くも赤信号がともっています。

海外生産拡大で国内弱化

 安倍首相がいう「強い経済」を実現するためには、製造業の生産能力が高まる必要があります。しかし、「製造工業生産能力指数は、海外現地生産比率の高まり等を背景に長期的に低下傾向にある」(内閣府「今週の指標」9月28日付)のが実態です。

 国際通貨基金(IMF)のスタッフが作成したリポート(「日本企業の国内投資不振の謎を読み解く」)は、海外生産の拡大が国内投資不振の原因になっていると指摘しています。

 アベノミクスは、「国内の消費心理を大きく刺激するには至っておらず、国内の需要見通しは改善されていません」と指摘。さらに「アベノミクスは大幅な円安などを通じて金融環境を改善しましたが、海外生産の増加は、人口高齢化と共に国内投資の足かせとなっています」と指摘しています。

 安倍首相の新しい「3本の矢」(「強い経済」「子育て」「社会保障」)についても、「実現は不可能だ」(市場関係者」)との声が上がっています。

待機児・介護 働く機会圧迫

 安倍首相は「子育て支援」や「介護離職ゼロ」を売りにしようと図っていますが、こうした分野でも、状況はむしろ悪化し、日本の経済・社会を土台から揺るがしています。

 保育所の待機児童数は4月1日時点で2万3167人にのぼりました。待機児童の定義を改悪したにもかかわらず、前年より1796人増えました。貧困の広がりや女性の社会参加で高まる保育の需要に政府の計画が見合わず、勤労の権利を侵害する重大事態です。

 認可保育所への入所を待っていても、地方単独の保育施設や基準の低い小規模施設などに入っていると、政府が定義する待機児童数からは除外されます。こうした児童は4月1日時点で少なくとも1万6405人いました。質の高い認可保育所に預けたい親の願いと、政府の政策の不整合は深刻です。

 家族の介護や看護のために離職する人も増加傾向にあります。最新のデータでは10万1100人にのぼります(2012年)。うち1万9900人が男性で、その8割以上が1年後も無職です。介護離職後の再就職の難しさを物語ります。

 安倍内閣は、▽事業所への報酬削減▽利用料アップ▽特別養護老人ホームの利用料補助の改悪▽要支援者へのサービス切り下げ―など、介護保険制度を次つぎに改悪。公的介護を使いにくくして家族の介護離職を促進し、経済活動の土台を浸食してきました。

図
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