2015年10月7日(水)
TPP 公約破り、コメも肉も譲歩
事実隠し国民だまし討ち
安倍晋三首相は環太平洋連携協定(TPP)の「大筋合意」を受けた6日の記者会見で、「聖域なき関税撤廃は認めない」などとする「自民党の、TPP交渉参加に先だって掲げた国民との約束はしっかり守ることができた」と語りました。また、コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖など重要5品目について交渉から「除外」「再協議(先送り)」するとした2013年4月の衆参両院農水委員会の国会決議にも反しないとの認識を示しました。
驚きの数字並ぶ
これはとんでもないごまかしです。今回の「大筋合意」では、豚肉では、低価格帯の関税を10年で10分の1に、高価格帯の関税は撤廃するとし、乳製品でもバター・脱脂粉乳などで生乳換算7万トンもの輸入の特別枠創設など、驚くべき数字が並んでいます。
北海道の農協組合長の一人は「北海道には大打撃だ。腹が立って言葉が出ない。これまで自民党は、数字を示さず『ちゃんとやる』と言ってきたが、結果がこれか」と声を震わせます。
「関税ゼロではないから公約は守った」などという言い分は到底通用しません。そもそも、自民党が政権復帰を遂げた12年暮れの総選挙で同党が掲げた選挙公約は「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対」というものでした。
異常な秘密主義
TPP交渉にあたって、日本政府は交渉参加国との「守秘義務契約」に署名しましたが、政府は当初、この契約の存在さえ明らかにしませんでした。守秘義務への不満を受け、議会などへ一定の情報開示を法律で定めた米国と比べても、国会にさえ交渉情報をほとんど明らかにしない日本政府の秘密主義は異常です。政府も、秘密保持義務にサインした前例がないと認めています。
今回の閣僚会合で、日本政府は米国に譲歩してコメの特別無関税輸入枠を設定しました。しかし、当初、特別枠設定を検討との報道に対し、甘利明TPP担当相は「事実でなく、極めて迷惑だ」(4月21日の記者会見)とまで語って、この事実を隠していました。農業者と国民をだまし討ちにしたのでした。
協定から撤退を
自民党も賛成した13年4月の国会決議も、「交渉により収集した情報」は「国会に速やかに報告」し、「国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置する」と明記しています。
政府は、公約違反、秘密主義で農業者、国民をだまし討ちにしたTPPの協定書作成作業から撤退し、調印を中止すべきです。
(林信誠)