2015年10月21日(水)
TPP95%で関税撤廃
農産物重要5項目でも3割
政府が概要公表
政府は20日、日米を含む12カ国が交渉してきた環太平洋連携協定(TPP)の「大筋合意」の概要を明らかにしました。市場開放分野では、全品目の95%で関税を最終的に撤廃します。過去に締結したどの協定よりも高い割合です。国会決議が交渉対象にしないよう求めた農産物重要5項目(コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖)でも、586品目のうち174品目、約30%で関税を撤廃します。東京都内で開かれた政府の説明会に出席した農業関係者からは、農業の将来を懸念する意見が相次ぎました。
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農林水産物全体では、2328品目のうち1885品目、約81%で関税を撤廃。過去のどの協定でも関税を撤廃したことのない834品目のうち395品目(約47%)が、TPPで新たに関税撤廃の対象になります。
関税が維持された品目でも、国別枠を新設し、関税を段階的に削減するなど、輸入を拡大します。コメでは、米国向けに当初3年間5万トン、13年目以降7万トン、オーストラリア向けに当初3年間6000トン、13年目以降8400トンの無関税輸入枠を設定します。牛肉では、TPP発効時に現行38・5%の関税を27・5%へ削減、その後段階的に削減し、16年目に9%まで引き下げます。
工業製品では、日本の関税を最終的に全廃します。最も時間をかける皮革・履物でも、協定発効後16年目に関税を撤廃。他方、日本車に対する米国の関税は、乗用車で15年目から削減開始、20年目で半減、25年目に撤廃。トラックについては、関税を29年間維持したうえ、30年目に撤廃します。
TPP条文は、前文のほか30章の構成。投資の章では、進出先の国の政策・制度変更などで損害を受けたとする外国企業がその国の政府を相手取って損害賠償などの訴訟を起こせる投資家対国家紛争解決(ISDS)条項が含まれています。
最終規定は、TPP発効条件などを規定。全ての署名国が国内手続き(批准)の完了を通告して60日後に発効します。2年たっても全署名国の通告がない場合、署名国合計の国内総生産(GDP)の85%以上を占める、6カ国以上の通告が必要となります。85%以上となるには、日本と米国が含まれる必要があります。
解説
国民の利益売り渡す/撤退し調印中止を
今回明らかになった環太平洋連携協定(TPP)市場開放の合意内容は、コメの無税輸入枠の新設を含め、農業と地域経済に重大な影響を与えます。自民党自ら賛成した国会決議で“聖域”とした農産物重要5項目すら3割の品目で関税撤廃です。安倍晋三政権が公約を投げ捨てたことはいよいよ明らかです。日本国民の利益を米国や多国籍企業に売り渡すものであり、決して容認できません。
交渉は国民の目から隠れて徹底して秘密裏に行われ、関税分野で全体図が明らかになったのは今回が初めてです。
TPPが決着したわけではありません。今後、協定文書の作成、調印、批准という段階があります。日本経済に重大な悪影響を与えることが明白になったいまこそ、政府はTPP協定書作成作業から撤退し、調印を中止すべきです。 (金子豊弘)
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