2015年10月29日(木)
主張
メガバンクの献金
「社会貢献」が聞いてあきれる
三菱UFJ、みずほ、三井住友の三大メガバンクをはじめ、全国の銀行が参加する全国銀行協会(全銀協)が、自民党への献金再開の動きを強めていることが注目されています。全銀協の佐藤康博会長(みずほグループ会長)が最近の記者会見で、日本経済団体連合会(経団連)の呼びかけにこたえて、各行に「自主的判断」で献金するよう求めたものです。銀行業界は1998年以来、献金を「自粛」しています。経団連の献金呼びかけ再開に続き、かつては自民党の最大の資金源だった銀行業界の献金再開は、金権政治に拍車をかける動きとして見過ごせません。
“献金御三家”の復活
銀行業界が電力や建設業界と並んで、かつては“献金御三家”と呼ばれたこともある大口の政治献金提供者だったことは有名です。その銀行業界が献金「自粛」に追い込まれたのは、電力同様、公共性の強い企業が特定の政党に献金することへの批判に加え、1990年代の金融危機のなか銀行の経営を支えるため巨額の公的資金が投入され、国から税金を受け取りながら政治献金するのは税金の還流になるとの厳しい批判にさらされたからです。
公的資金投入だけでなく、政府・日銀の異常な低金利政策によって銀行は預金者にまともな利息も払わず、一方「金融再編」の名による中小銀行の取りつぶしや採算が上がらない店舗の整理・淘(とう)汰(た)、預金者が自分の口座を利用するのにも手数料を取るなど、利用者・国民犠牲の経営を続けてきました。公的資金を投入されたメガバンクなどは、「不良債権」が残ることを口実に、最近まで1円の法人税も納めていませんでした。
全銀協は、経団連の呼びかけに応じた政治献金を「社会的貢献の一環」だといいますが、「社会的貢献」などとは聞いてあきれます。銀行は現在もまだ低金利政策をはじめさまざまな恩恵を受けており、預金者や利用者への犠牲を続けています。公的資金は返済し、「不良債権」を口実に法人税をまけてもらう制度も使えなくなっていますが、「社会貢献」をいうなら特定の政党に献金するのではなく、まず国民に還元すべきです。
銀行業界は安倍晋三首相が第1次政権をスタートさせた2006年にも、三大メガバンクなどは公的資金は返したと献金再開に動いたことがあります。しかしその時にはいくらなんでも法人税を納めていない銀行からの献金は国民の理解が得られないと、自民党側の安倍総裁(首相)が「受け取り自粛」を発表し、中止になりました。
銀行業界が、メガバンクなどが法人税を納めるようになったので献金の障害がなくなったとでも考えているならそれこそ思い違いです。「社会貢献」をいうなら、税金は納めるのはもちろん、預金金利や手数料も見直すべきです。
献金は政治買収そのもの
経団連が呼びかけている政治献金が「社会貢献」などでないことは明らかです。経団連が献金呼びかけと同時に発表した「政策評価」には消費税の増税、法人税の減税、原発再稼働など財界の身勝手な要求が並んでいます。まさに献金は政治の買収そのものです。
政治をゆがめる企業・団体献金は本来全面禁止すべきです。公共性の強い銀行の献金など、絶対許されるべきものではありません。