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2015年11月29日(日)

主張

TPP「政策大綱」

国民的な中身の検証こそ先決

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 安倍晋三政権が、環太平洋連携協定(TPP)交渉の大筋合意を受けた「総合的なTPP関連政策大綱」を決め、今年度の補正予算や来年度予算編成に反映させるとしています。中堅・中小企業を後押しする「新輸出大国」やTPPを通じた「強い経済」の実現、TPPで大きな打撃を受ける農業にたいする「農政新時代」の提唱などです。具体的な対策は来年秋までに詰めるという、裏付けのないスローガンの羅列です。秘密交渉で大幅に譲歩した大筋合意の全容も明らかにせず、政府が情報を独占したまま、対策なるものを打ち出すのは、きわめて不当です。

国会と国民無視の表れ

 TPPは12カ国の交渉が大筋合意したといっても、まだ協定の全文も確定せず、参加各国の署名や批准の見通しもはっきりしません。そんな中、安倍政権が「対策」を打ち出したのは、国民の不安・懸念に応えず、協定の中身が国民に知られないうちに都合のよい宣伝で協定への署名や批准を進めやすくし、来年の参議院選挙も乗り切ろうという党利党略です。

 とりわけ大きな被害を受ける農業分野では、コメなど重要5項目について関税の撤廃や引き下げを認めず、それができなければ交渉脱退も辞さないという国会決議にもとづく交渉だったはずです。その決議が守られたかは国会できちんと検証すべきです。野党がそろって要求した臨時国会も開かず一方的に対策を打ち出すのは、国会軽視、国民無視の表れです。

 安倍政権と農林水産省は、農林漁業分野でも「TPPの影響は限定的」として楽観的な見通しをしめしたうえ、「大綱」では大量の輸入拡大を約束したコメについては備蓄対策の改善で国産に影響させないとしました。関税を大幅に引き下げる牛肉・豚肉についても経営安定事業の補てん率を引き上げるなど、当面の対策を打ち出しただけです。こうした対策をとること自体、予想される被害の大きさを示します。5項目以外の関税撤廃品目や影響が大きい中山間地域の対策は無視または先送りです。

 「大綱」は「農政新時代」を標ぼうし、農林水産物輸出の1兆円目標(2014年は6100億円)の早期達成や増大する輸入食料にたいする食品の検査強化、国際競争力強化のための構造政策(農地の大規模化、生産規模の拡大など)の推進などを強調しています。しかし、それらもこれまでの政策の範囲内で、現実に生産を担っている農林漁業者や地域を区分けし、輸出に挑戦する“意欲ある担い手”に対策を集中するものです。自民党農政がすすめてきた輸入自由化と一体の構造改革をいっそう推進する表明でしかありません。

徹底検証で批准阻止を

 農水省が発表したことしの農業センサス(速報値)によると、日本の農業就業人口は10年からの5年間で51万6000人も減少しました。家族経営と地域農業の困難を示しています。国内農業をさらに破壊するTPPの押し付けはやめるべきです。

 いま必要なのは、TPP大筋合意と協定案の全体、交渉経過などの情報を全面的に公開し、国会、国民の中で徹底的な議論を行うことです。国会決議に違反していないか、日本の経済と国民の暮らしにどう影響するかを検証し、協定への署名・批准を阻止しましょう。


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