2015年12月2日(水)
主張
大企業の内部留保
「まず減税を」は財界の身勝手
安倍晋三政権が「経済の好循環」を掲げ、大もうけしている企業に賃上げや設備投資の拡大を求めているのに対し、財界・大企業がその条件として、法人税減税の前倒しや雇用分野の「規制緩和」などを露骨に要求しています。安倍政権が賃上げなどを言い出しているのは、政権発足以来3年間にわたる経済政策「アベノミクス」の結果、大企業のもうけは記録的に増えているのに、賃金も消費も増えず、経済運営の破綻が明確になっているためです。大もうけし、内部留保もため込んでいるのに、もっと減税すればなどと求めるのは、身勝手な居直りです。
利益増えても賃金増えず
安倍政権の経済政策「アベノミクス」の結果、企業の利益は記録的に増えているのに賃金も設備投資も増えていないことは政府自身も認めている、動かし難い事実です。麻生太郎財務相が政府の経済財政諮問会議などで、2012年度から14年度までの2年間に、企業の経常利益は16・1兆円増えたが、設備投資は5・1兆円、従業員の給与・賞与は0・3兆円しか増えておらず、企業の内部留保は49・9兆円、手持ちの現金・預金等は20・2兆円も増えているという数字を繰り返し指摘しているのはその何よりの証拠です。
大企業は大もうけしても労働者の賃金が増えず、「改善した」といわれる雇用も派遣やパートなど非正規雇用の労働者が中心です。この結果、政府の家計調査でも勤労者世帯の収入は伸びず、消費支出もこの9、10月と連続して実質減少です。大企業が大もうけすれば賃金が上がり、消費も増えるという「アベノミクス」の「トリクルダウン」(したたり落ち)の筋書きが破綻しているのは明らかです。
安倍政権があわてて「経済の好循環」を強調し、賃上げなどを財界に要求しだしたのはそのためですが、財界の対応は身勝手そのものです。11月末の政府の「官民対話」に榊原定(さだ)征(ゆき)経団連会長が提出した資料は、賃上げや設備投資拡大の条件として、法人実効税率の早期引き下げや労働分野の「規制緩和」のほか、原発再稼働の加速まで持ち出すありさまです。
財界・大企業は、巨額の内部留保を還元しろと言われても、内部留保は設備投資などに使っているので還元できないといいますが、設備投資などに使っているのはごく一部で、使い切れないからこそ、手持ちの現金・預金が増え続けているのです。麻生財務相が指摘するように、政府の法人企業統計でもその金額は210兆円を超します。経営力の弱い中小企業と違い、大企業は万一の場合に備えてそれほど多額の運転資金を確保しておく必要はありません。内部留保を減らすことは十分可能です。
減税してもため込むだけ
売り上げから賃金や原材料費を賄い、税金も納めた残りが内部留保です。実際には賃金などを抑制しているのに、財界いいなりに法人税を減税しても、その恩恵はため込みに回るだけです。大企業を潤すだけの法人実効税率の引き下げは、ただちにやめるべきです。
あれこれ条件を付けず、賃上げを最優先してこそ、無駄なため込みも減り、消費も増えて、経済もまともに回りだします。安倍政権が本気で「経済の好循環」を言うなら、財界の身勝手を抑え、賃上げの実現を図るべきです。