2016年1月31日(日)
主張
安倍政権経済政策
財界の、財界のための、政治だ
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」によって大企業のもうけが記録的に増え、それを背景に財界・大企業の自民党への献金も急増するなかで、安倍政権と財界の癒着がこれまでの自民党政権でも見られないほど深まっているといわれます。とりわけ「世界で一番企業が活躍しやすい国を創る」「企業の稼ぐ力を高める」などと公言する安倍政権のもとで、財界・大企業が経済政策にあれこれ注文を付け、政権の側も財界代表が中心になって参加する諮問機関などでお手盛りで決めてしまい、国民の反対を押し切って強行する姿があらわになっています。
全面的に政策を牛耳る
「政府には、重要政策課題を強力に推進していただきたい。具体的には、企業活力の向上に資する税制改革、大胆な規制・制度改革など必要である」―。財界の総本山と呼ばれる、日本経済団体連合会(経団連、榊原定征会長=東レ最高顧問)が今年の年頭に発表したメッセージです。原発再稼働の加速、社会保障給付の「適正化・効率化」、環太平洋連携協定(TPP)の速やかな発効など国民の反対を無視した要求が続きます。
経団連が今年の春闘の経営側の指針として19日発表した経営労働政策特別委員会(経労委)報告では、賃上げはベースアップに限らないと消極的な姿勢を示す一方、「残業代ゼロ」法案など労働法制の改悪に取り組むことを強く要求しています。もうひとつの財界団体である経済同友会(代表幹事・小林喜光三菱ケミカル会長)も年頭見解で、社会保障と税の一体的「再」改革などを要求しました。
財界の要求は、原発輸出や武器輸出の拡大など、国内の政策にとどまらないものもあります。財界が安倍政権の政策を、全面的に牛耳ろうとしているのは明らかです。ここ数年、大企業の恩恵にしかならない法人税減税をめぐり、財界・大企業が企業献金の拡大などをテコに猛烈に働き掛け、2016年度から法人の実効税率を20%台に引き下げることを前倒しで決定させたこと一つ見ても、財界と政権の一体ぶりは明らかです。
見過ごせないのは、安倍政権になって経済政策の決定が、要求するのも財界なら、検討し決定するのも財界という、「財界の、財界による、財界のための政治」の色彩を強めていることです。安倍政権が経済政策の司令塔としている経済財政諮問会議や産業競争力会議には、閣僚と政府に近い学者以外は財界関係者しか加わっていません。安倍政権が「アベノミクス」を発展させるという「1億総活躍国民会議」にも経団連会長や日本商工会議所会頭が参加しています。
労働側抜きにした「春闘」
極端なのは賃上げを検討する場で、安倍政権はこれまでは連合なども参加する「政労使会議」で検討していたのを、昨年末からは「官民対話」の名で政府と財界関係者だけで検討するものに変えてしまったことです。いくら「官製春闘」と呼ばれるとはいえ労働側が参加しない「春闘」とは全く異常です。
本来政府の経済政策は、国民全体の暮らしを良くし、経済全体を発展させるためのものです。異常な財界・大企業奉仕は、経済のゆがみをいっそう激しくすることにしかなりません。安倍政権を倒し、財界べったりの経済政策の国民本位への切り替えが不可欠です。