2016年2月8日(月)
北朝鮮ミサイル発射 日本政府の対応
過剰な軍事対応を展開
通告経路外の自衛隊配備で“宣伝”
北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射に対し、日本政府は前回の2012年に続いて戦争さながらの過剰な軍事対応を展開し、専門家から実効性が疑問視される「ミサイル防衛」(MD)体制の宣伝を繰り返しました。
「迎撃」自体が困難
防衛省はミサイル発射に際して、7日未明までに「迎撃」態勢を構築。海上自衛隊はスタンダード・ミサイル(SM3)装備のイージス艦3隻(東シナ海2隻、日本海1隻)を展開。航空自衛隊はパトリオット・ミサイル(PAC3)を首都圏3カ所(市ケ谷、朝霞、習志野の自衛隊基地内)、沖縄本島2カ所(那覇基地、知念分屯基地)、先島諸島2カ所の計7カ所に配備しました。(地図)
北朝鮮が2日に国際海事機関(IMO)に通告した飛行経路によれば、日本の上空を横切るのは沖縄県・先島諸島の多良間島付近です。しかし、日本政府は経路の判明後も首都圏3カ所のPAC3を維持。これらはMD体制の宣伝以外に意味のない過剰対処です。
これに加え、同省は7日未明までに宮古島と石垣島へのPAC3配備を完了させました。PAC3の迎撃高度は「数10キロメートル」(防衛省)とされ、先島諸島上空約500キロを通過したとされる今回のミサイル迎撃はそもそも不可能。また、予想軌道から外れた破片などの迎撃はきわめて困難といわれています。
配備地ならし狙う
政府は一方、通告経路のほぼ直下にあたる先島諸島の多良間島だけでなく、経路から約20〜150キロも離れた宮古島、石垣島、与那国島にも陸上自衛隊の化学防護部隊などを派遣し、被害が生じた場合の対処にあたらせました。
これら3島ではいずれも中国に対抗するための新たな自衛隊部隊の配備が狙われており、PAC3や陸自部隊の展開は、住民を“軍”に慣らすための“地ならし”も兼ねています。
中谷元・防衛相は事実、先島諸島へのPAC3の常時配備について「今後の北朝鮮などの動向を見ながら考えたい」(7日)と可能性を否定しませんでした。
政府は2004年〜15年までにMD関連で約1兆3500億円もの巨費を支出。さらに、大気圏再突入時のミサイルを「迎撃」する終末高高度防衛(THAAD)システムの導入も検討しています。北朝鮮のミサイル・核兵器開発と「いたちごっこ」となり、際限ない軍事費の膨張と緊張の激化という悪循環に陥る危険があります。(池田晋)
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