2016年2月12日(金)
主張
甘利氏の「口利き」
首相に疑惑解明の立場がない
千葉県内の建設会社と都市再生機構(UR)とのトラブル処理を「口利き」したあっせん利得の疑惑で、甘利明・前経済再生担当相が現金を受け取っていたことや秘書への監督責任を認めて閣僚を辞任して2週間近くたちました。「口利き」の疑惑そのものは解明されておらず、甘利氏は辞任後もなにも明らかにしていませんが、国会での追及やマスメディアの報道で疑惑は深まる一方です。解明が進まないなかで重大な問題は、閣僚としての任命権者である安倍晋三首相が、甘利氏の説明責任を繰り返すだけで、自ら疑惑を解明する立場を欠いていることです。
無責任な甘利氏まかせ
甘利氏の疑惑が表面化して以来、安倍首相は「甘利氏が説明責任を果たす」と甘利氏任せの態度を続けています。甘利氏が「口利き」疑惑については口を拭ったまま、閣僚を辞任した後も、「甘利氏は政治資金として届け出ていた」「説明責任を果たした」と露骨に擁護するありさまです。甘利氏が閣僚の辞任を申し出たさい安倍首相が“慰留”していたことも明らかになっており、甘利氏の疑惑を任命権者として自ら解明するどころか、かばい続ける安倍首相の態度は異常この上ないものです。
安倍首相は甘利氏をはじめ閣僚を起用した責任があります。甘利氏は安倍首相の盟友としても知られ、経済産業相や経済再生相など重要閣僚を歴任してきました。安倍首相が政治への国民の信頼を取り戻そうと思うなら、何にも増して、甘利氏にすべての疑惑を解明するよう求めるべきです。
甘利氏の疑惑など、「政治とカネ」の問題を審議するため開かれた衆院予算委の集中審議(10日)でも、安倍首相は「甘利氏は説明責任を果たす」と判で押したような答弁です。日本共産党の穀田恵二議員が、安倍首相が甘利氏の発言を丸のみして、「甘利大臣自身はいわゆる『口利き』には関与してないようだ」と述べていたことに対し、何をもって「関与していない」といえるのかと追及したのに対しても、首相は「甘利氏が言っているから」としか答えません。
「口利き」によるあっせん利得の疑惑は閣僚どころか議員の資格にかかわる重大犯罪です。政治献金として届け出れば問題がないかのようにいう安倍首相や甘利氏の態度は、決して許されません。
甘利氏が「調査中」などといって「口利き」を認めていなくても、金銭を渡し、飲食で供応した建設会社の担当者自身が「口利き」してもらったと言っているのです。「口利き疑惑」は明白なのに、なにも調べようともせず、甘利氏の主張を繰り返すだけの首相に疑惑解明の立場がないのは明瞭です。
腐敗の根を断ってこそ
最新の『週刊文春』の報道では、建設会社とURのトラブルに甘利氏の地元事務所や秘書が関与して「口利き」した結果、URの建設会社への補償金が当初より4000万円増え、その一部から甘利氏の秘書にカネが渡ったことが明らかにされています。事実ならあっせん利得の罪に該当するのは明白です。「口利き」疑惑は徹底して明らかにされるべきです。
安倍首相が甘利氏の疑惑を解明しない限り国民の政治不信は解消しません。疑惑を解明し、腐敗の根を断つ企業献金の全面禁止に踏み出すことこそ、首相の責任です。