2016年3月8日(火)
論戦ハイライト
参院予算委 TPP政府対応 紙氏の追及
交渉ごまかし 試算でたらめ
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こんなデタラメでTPP(環太平洋連携協定)そして関連法案の閣議決定など許されない――。7日の参院予算委員会で紙智子議員はTPP問題の核心を突き、政府が8日に行おうとしているTPP承認案と関連法案の国会提出の中止を求めました。
政府が2月に署名したTPPは、全面的な関税撤廃に進んでいく仕組みが組み込まれたもので、国民生活に密接にかかわる分野で国民の利益と経済主権をアメリカや多国籍企業に売り渡すものです。
除外はできたか
2013年の国会決議では「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について…除外又は再協議の対象とすること」を政府に求めていますが、協定では、農林水産物で81%、重要5項目でも30%もの関税撤廃を受け入れています。
国会決議通り「除外はできたのか」との紙氏の問いに、政府側は「TPPに除外という言葉はない」(石原伸晃経済再生担当相)と認めつつも「重要5品目を中心に農林水産品の約2割に関税撤廃の例外を確保した」(安倍晋三首相)などとごまかしました。
紙氏は「除外と例外は違う」と指摘。「除外」規定は、日本がこれまで結んだ14カ国とのEPA(経済連携協定)のすべてにあるが、コメなど重要品目を関税の見直し対象から「除外」するということで、「例外」は関税見直しの対象になるということだと述べました。
紙 政府は国会決議を後ろ盾に交渉してきたというが、そもそも除外を要求したのか。
首相 TPPでは関税に関わる約束で除外との区分はないが例外措置を確保している。
紙 最初から要求していないのか。
首相 交渉の中身については申し上げることはできない。
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紙氏はパネルを示し、TPPには、除外規定がないどころか、関税撤廃を加速させる仕組みが盛り込まれていると指摘。「除外規定がないということは、関税に関してすべて見直しの対象になるということであり、後戻りのできない関税撤廃に突き進む協定だということだ。明らかに国会決議違反ではないか」と追及しました。
首相は「再協議には応じるが国益を害するものには合意しない」などと答弁しました。
紙氏は、米国通商代表部の管轄下にある「貿易のための農業政策諮問委員会」(APAC)の報告が「われわれはどの物品も除外されなかったことに留意し、TPPの適用範囲を称賛する」と喜びの声を上げていることを指摘。JA農協組合長のアンケートでも92%が国会決議を「守れていない」と答えていることをあげ、決議違反は明らかだと徹底追及しました。
「調製品」含めず
次に紙氏は全国の農林水産業者をあ然とさせている政府のいい加減な影響試算をただしました。政府は13年に出した試算では農林水産物の生産減少額を3・2兆円としていたのに、今回は1300億〜2100億円と大幅に縮小しています。
紙氏は、別枠で7万トン以上入ってくるコメの生産減少額がゼロ、安い輸入品が入ってくる牛肉の生産減少率がゼロなど、誰が見ても驚く内容だと指摘。輸入牛肉や輸入豚肉の「調製品」が影響試算に含まれていないことも明らかにしました。
さらに紙氏は、政府が影響試算の対象とした農産物は19品目(産出総額約5兆873億円)だけで、それ以外の農産物(同約3兆4875億円)の生産減少額は試算していないと指摘。試算から除いたものは「影響が小さかった」と説明する政府側に、JA長野中央会は19品目に含まれないブドウなど7品目で1県だけでも約75億円も生産額が減少すると試算していることをパネルで示しました。
紙氏は「自治体からも政府の試算は信用されていない。こんなデタラメな計算のままでTPP関連法案の閣議決定をするなんて許されない」と批判しました。
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