2016年4月28日(木)
熊本地震 農業被害甚大
イチゴが・イモが・乳牛が…
「国の支援早く」 農家悲鳴「個人で対応は不可能」
熊本県西原村。阿蘇山麓に広がるこの村は、熊本地震で震度7〜6強の揺れに2度、襲われました。人口7000人のうち、2割がいまも避難所で生活。基幹産業である農業の被害はとりわけ甚大です。「一刻も早く、国の支援を」。農民たちが訴えます。 (青柳克郎)
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ビニールハウスに入ると、すえたにおいが鼻をつきます。あとは収穫を待つだけだった無数のイチゴが、無残な姿を見せています。給水が地震で途絶え、売り物にならなくなったのです。
作物息絶え絶え
果物や野菜の苗のビニールハウスが立ち並ぶ同村。ハウスの中は、息も絶え絶えの状態です。
「今年の出荷量は、去年の半分程度か…」
12ヘクタールの畑を持ち、サツマイモを栽培する男性(66)が言います。
作っているのは、冷えてもおいしいと評判の新品種「シルクスイート」。昨年から本格的に栽培を始め、関西を中心に好評を博してきました。4月末はハウスで苗を育てる時期で、毎日1トンの水が必要ですが、貯水池の設備や配管が破損し断水。ポンプで川の水をくんでいますが足りず、しおれる苗が出ています。
畑には、波うったようなでこぼこが無数に発生。へこんだ場所には水がたまり、根腐れをおこすため、そのままでは植え付けができません。整地するにはブルドーザーが必要ですが、多額の費用がかかります。
「この被害は、個人でどうにかできるレベルを超えています。国の手厚い支援が必要です。どうか少しでも早くお願いしたい」(男性)
牛舎倒壊の危険
酪農にも、深刻な被害が出ています。
「牛舎の骨格が傷んでいる。もう1回大きな揺れが来たら、全部倒壊だ」
険しい表情で話すのは、乳牛約100頭を飼う男性(66)。地震発生後、避難指示が出されるなかでもとどまり続け、牛の世話や施設の復旧にあたりました。
地震で一部の牛舎が倒壊し、5頭が犠牲に。搾乳できない日が続いたため、2〜3割の牛に乳房炎や血乳などの症状が生じました。現在、それらはほぼ回復していますが、相次ぐ余震で牛にストレスがたまり、牛乳の出が悪くなったり、小さな物音で驚いたりするなどの様子が見られるといいます。
現在、牛乳の出荷量は震災前の2割減。厳しい状況に立ち向かいつつ、酪農の仲間を気遣います。
「酪農家は、みんな再建の意欲がある。しかし、復旧の手助けがあまりに遅れては、それもなくなってしまう。国や県はしっかり対策をとってほしい」