2016年5月12日(木)
オバマ米大統領 広島訪問
問われる日本政府の姿勢
オバマ米大統領の広島訪問に、被爆地・広島の市民からも歓迎の声が上がっています。
広島・長崎に原爆を投下した米国の大統領として初めて被爆地を訪問するオバマ氏。同行する安倍晋三首相とともに、日米両国が「核兵器のない世界」に向けて、本格的な歩みを進めることができるかが注目されます。
被爆の実相に触れて
昨年8月6日の広島市の「平和宣言」は、オバマ氏ら各国為政者の被爆地訪問を求め、各国為政者が被爆者の思いを直接聞き、被爆の実相にふれることで、「核兵器禁止条約を含む法的枠組みの議論を始めなければならないという確信につながるはずです」と望みました。
広島の願いは、「核兵器が存在する限り、いつ誰が被爆者になるか分からない」(同宣言)という痛切な思いを下敷きにした核兵器の禁止、廃絶です。そのための、「核兵器禁止条約」など法的枠組みを構築するための国際交渉の開始です。
被爆地の思いに応え、核兵器禁止条約の国際交渉を開始せよの声に、正面から向き合えるか―。オバマ氏と、同行する安倍首相の姿勢が厳しく問われています。
今月末の伊勢志摩サミットに先立って開かれた主要7カ国(G7)外相会合(4月)で発表された「広島宣言」は、「核兵器のない世界」が「漸進的なアプローチをとることのみ達成できる」と強調し、核兵器禁止条約の交渉開始については、一言も言及しませんでした。
日本政府は国家安全保障戦略(13年12月)で「核兵器の脅威に対しては、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止が不可欠」と明記しています。さらに安倍内閣は4月1日、「憲法9条は一切の核兵器保有および使用を禁止しているわけではない」という答弁書を閣議決定しています。
米国もケリー国務長官が外相会合後の記者会見で、「核兵器は禁止されなければならないが、それは抑止力を低下させることで世界がより危険になるようなやり方ではなく、より安全になると認めうる形で進められなければならない」と言明。核抑止政策に固執し、核兵器禁止条約の交渉開始に後ろ向きの姿勢を示しました。
核抑止策改めてこそ
米国の核の傘、核抑止政策に固執し、核兵器禁止条約の国際交渉開始を求める世界の声に背を向けてきた日米両政府が、オバマ、安倍両氏の広島訪問を機会に、これまでの態度をあらためてこそ、広島訪問が、文字通りの「歴史的訪問」となるはずです。
(山田英明)