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2016年5月16日(月)

世界が注視 オバマ大統領の広島訪問

核兵器禁止条約早期交渉開始か

「段階」論による先送りか

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 オバマ米大統領が27日に世界最初の被爆地・広島を現職の米大統領として初めて訪問します。1945年の原爆投下で、その年のうちに約14万人が犠牲となった地への「前向きの一歩」。これを機にこれまでとってきた「段階的」アプローチなどの核兵器合理化論から踏み出し、核廃絶を目指す世界の取り組みに背を向けてきた姿勢を改めるのか―日本と世界がオバマ氏の言動を注視しています。(伊藤寿庸)


変化と限界

実際は核抑止力論

 オバマ氏は2009年4月、プラハで「核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として、米国は行動する道義的責任がある」と述べ、変化への期待を抱かせました。

 しかし実際の方針は、核抑止力論に立つという限界を持っていました。10年に発表された政策文書「核態勢の見直し」は、「核兵器が存在し続ける限り継続する米国の核兵器政策の根本的役割は、米国、同盟国、パートナー国に対する核攻撃を抑止することにある」と宣言しました。「米国の政策の長期的目標は核兵器の廃絶である」が、「今日そのような条件は存在していない」と「核兵器のない世界」の目標を先送りしました。

 米国政府が保有核兵器の近代化・維持を行う計画では、2050年代まで核兵器を保有し続けることを前提に30年間で1兆ドル(約108兆円)といわれる支出を行うとしています。

世界の声は

高まる交渉への機運

 今世界では、核兵器禁止・廃絶を目指す運動が、国際政治の場で大きな高揚を見せています。

 その出発点は、2000年の核不拡散条約(NPT)再検討会議で、全核保有国が保有する核兵器を完全廃絶するという「明確な約束」を確認したことでした。2010年のNPT再検討会議で、「核兵器のない世界」実現のために「必要な枠組みを確立する特別な取り組みを行う必要」を確認した行動計画を採択。核兵器禁止条約の国際交渉への機運の高まりが示されました。

 1970年に発効したNPTは、もともと五つの核保有国が核兵器を独占し、それ以外の国は核兵器を持たないことを約束するという差別的体制をつくり出しました。同時に、NPT第6条で核保有国は核廃絶に向けての努力をすることを義務づけられました。

 NPTが無期限に延長された後の90年代後半から、非核保有国の間で第6条を活用して核廃絶を迫ろうという動きが強まりました。

 5年ごとに開かれるNPT再検討会議では、核兵器を禁止・廃絶する「法的措置」を求める動きが高揚。昨年4〜5月の第9回NPT再検討会議では、初めて公式文書で核兵器禁止・廃絶のための条約について触れられました。

 このような流れが世界の本流となっていることを示したのが、昨年秋の国連総会でした。

 核兵器を非人道的兵器として禁止し、廃絶することを求める決議「核兵器の人道的結果」が初めて採択されました。12年に16カ国の共同声明として始まった流れが加盟国8割の賛成を得るまでに発展しました。

 オーストリアが主導した「核兵器の禁止と廃絶のための人道的誓約」という決議も新たに採択されました。法的措置を議論する「作業部会」を求める決議「核兵器廃絶の多国間交渉の前進」も138カ国が賛成し採択されました。この「作業部会」は今年に入ってスイスのジュネーブで2月と5月に相次いで開かれています。

「段階的措置」

廃絶先送りの議論

 核保有国が持ち出してきているのは、核兵器のない世界への「段階的な接近」という主張です。

 13年の国連総会で、米英仏の3カ国は「核兵器禁止条約の早期締結のための交渉開始」を求める決議に反対して共同声明を出しました。「われわれは、実際的で段階的な接近こそ、世界の安全と安定を維持しながら、軍縮努力で本当に前進する唯一のやり方であると確信している」

 昨年の国連総会で、この主張は米英仏中ロの5カ国に広がりました。

 核兵器を禁止すると「安全と安定が崩れる」という言い分は、核兵器が相手からの攻撃を予防するのに役立っているという考え方です。これは廃絶をどこまでも先送りする「核抑止力」論そのものです。

 米国などは、段階的部分的措置を通じて、核軍縮を進めていると主張しています。実際はどうか。

 オバマ氏がプラハ演説で第1に挙げたのが米国とロシアの間で結んだ新戦略兵器削減条約(新START)です。4月1日の発表で、配備された弾道ミサイルや戦略爆撃機の数は、米国が741、ロシアが521、核弾頭数は米国が1481、ロシアが1735となっており、今も人類を何度も絶滅させられるだけの核爆弾を保有しています。

 包括的核実験禁止条約(CTBT)も1996年の調印から20年たっても、米国、ロシアなどが未批准で、発効のめどが立ちません。核保有国が重視している兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約)も、93年に米国が提唱して以来、条文案も国際協議もいっさいできていません。

 ロシアのプーチン大統領は昨年3月、ウクライナのクリミアを併合するなどの暴挙に出た2014年当時、核兵器使用も検討していたと発言しています。

 「今日、核破局の危険は冷戦時代よりも大きい」―今年1月、ペリー元米国防長官はこう警告しました。

 このような状況は、核保有国が主張する「段階的措置」の空虚さを示しています。

 国連などで各国が主張しているように、「核兵器が存在し続けることこそ人類への最大の脅威」であり、「核兵器が使用される危険に対する唯一の対案は核兵器の禁止・廃絶」しかありません。

日本共産党 交渉開始へ働きかけ

写真

(写真)会談し握手するカバクチュラン・NPT再検討会議議長(右)と志位和夫委員長=2010年5月2日、ニューヨーク(林行博撮影)

 日本共産党は、核兵器廃絶を一貫して掲げてきた被爆国の政党として、核兵器禁止条約の交渉開始が国際的な合意となるよう海外でも活動してきました。

 オバマ氏のプラハ演説を受けて、志位和夫委員長は2009年4月、「歴史的意義を持つ」と発言を歓迎するとともに、「核保有国が核兵器廃絶への約束に誠実で責任ある態度をとる方向に転換する」ことを呼びかける書簡をオバマ大統領宛てに送りました。これには同大統領の指示によりグリン・デイビス国務次官補(代理)の書いた返書も寄せられました。

 2010年5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議(ニューヨーク)には、志位委員長が出席し、会議成功のための働きかけをおこないました。

 志位氏は現地で、NPT再検討会議のカバクチュラン議長と面会。会議終了後に同議長に、会議の成果を高く評価する感謝の手紙を送りました。同議長は返書の中で、志位委員長の活動について、「あなたの努力が、この会議のプロセスにきわめて大きな貢献となり、10年NPT再検討会議の大きな成功に役立ったことは確実です」とのべていました。

 10年にカンボジアのプノンペンで開かれたアジア政党国際会議(ICAPP)総会では、会議が採択した「プノンペン宣言」に「核兵器禁止条約の交渉を支持する」という一文が明記されるよう尽力しました。

 事前に届けられた同宣言の原案に対して、志位委員長が提案した核兵器問題の文面が受け入れられ、同年5月のNPT再検討会議の「最終宣言」に明記された「すべての国が核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを確立するために特別な取り組み」をおこなうという国際社会の合意などを「支持」する文言が盛り込まれました。


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