2016年6月18日(土)
主張
参院選と農業問題
TPP阻止、地域再生へ共同を
参院選の公示を前に安倍晋三首相が地方の1人区を中心に遊説し、農業問題で都合のよい数字だけを並べたてて、経済政策「アベノミクス」の“成果”だと宣伝しています。農業に大きな打撃を与える環太平洋連携協定(TPP)についても、もっぱら輸出拡大など“効用”だけの宣伝です。農村部では特に「アベノミクス」の“効果”がないことやTPPへの批判が強いこと、全国32の1人区のすべてで野党共闘が実現したことへの首相の危機感を示すものですが、事実に反した宣伝で支持を得ようとはフェアではありません。
農業・農村情勢の激動
今回の参院選では、「アベノミクス」やTPPへの批判を背景に、全国で少なくない農協政治団体の県組織が自民党を支持せず自主投票を決めるなど、農業・農村情勢の激動が見られることが特徴です。農村部が多い全国の1人区で野党共闘が成立した要因でもあります。野党共闘は戦争法廃止や立憲主義回復を掲げるとともに、共通政策に「TPP合意に反対」を盛り込んでおり、農業関係者の間でも期待が広がっています。
安倍首相が参院選を前に1人区を重点的に遊説しているのもそうした情勢への危機意識の表れですが、「アベノミクス」の“成果”が地方にも出ているとか、TPPには“効用”があるという宣伝でごまかすことはできません。
国内の農家は、農産物価格の低落と「アベノミクス」がもたらした円安を主因とした飼料・肥料など資材価格の上昇で経営難にあえいでいます。農業所得は減少し続け、農林水産省の統計でも2014年には対前年比で個別経営は10・2%、集落営農は21・3%も減っています。その一方で農産物の輸入は3・8%も増え、6兆1千億円もの輸入超過です。米価をはじめ農産物生産者価格の低落を放置し、輸入増を野放しにしている安倍農政が農家に苦難をもたらしているのは明らかです。
安倍首相は、15年の農林水産物輸出が7500億円を突破したことを上げ、TPPで輸出を大きく増やせると宣伝しています。しかし、いまでも輸出の大部分は食品工業製品や水産物であり、コメ、牛肉、野菜・果実の生鮮食料品に花き、茶を含めた農産物の輸出は830億円程度にすぎません。円安のもとでは数量より価格の伸び率が大幅に高くなっています。農産物輸出に取り組んでいる事業者に行った日本農業新聞のアンケート調査でも、「輸出が農家所得の増大につながった」という回答は42%にとどまっています。農家所得増大の切り札とする輸出拡大も、一部の生産者や加工業者にしか恩恵がないことを示しています。
TPPを大争点に
安倍政権が国内農業への影響は軽微などとする試算や対策のもとで強行しようしているTPPの批准が、日本農業の生産拡大も営農継続も困難にし、大規模経営をふくむ大多数の農業者から展望を奪うことは明らかです。
日本共産党は参院選政策で、TPPに断固反対し、食の安全・安心と地域経済に責任をもつ政治への転換と農業再生の具体策を提起しています。TPPと農業再生を参院選の大争点に押し上げ、共同を思い切って広げて、野党共闘の勝利と日本共産党の躍進を実現しようではありませんか。