2016年7月14日(木)
生活できる最低賃金を
全労連最低生計費調査 大幅引き上げ必要
中賃審が議論再開
参院選のあいだは開かれなかった中央最低賃金審議会(中賃審)の小委員会が、14日、最賃引き上げ目安の議論を再開します。「いますぐどこでも1000円を実現し、1500円をめざす」ことは、労働者・国民に広がる切実な願いです。最賃の大幅引き上げの必要性を、全労連が各地で行った最低生計費調査からみます。
25条に基づき
最低生計費調査は、憲法25条に基づく「健康で文化的な最低限の生活」を実現するにはいくら必要かを調べるものです。これまでに、2008年の首都圏(さいたま市モデル)からはじまり、09年に長崎、12年に徳島、香川、15年に広島、新潟、静岡、愛知、16年に岩手、福島、北海道の各地で実施しています。
若手組合員を中心に「生活実態調査」「持ち物財調査」を行い、出費が必要な項目を細かくリストアップ。対象地域で、不動産屋や家電量販店などの市場価格を調査し、耐用年数も考慮に入れ、税金や社会保険込みで年額・月額を算出。そこから、1日8時間労働の普通の働き方で時給を割り出します。
たとえば、衣服は男性が背広2〜3着、女性はジャケット2着とスカート3〜4着を着回すなど、つつましいながらも、みすぼらしくならない最低限の生活を想定しています。食事は、健康を保つ栄養バランスを考えて組み立てます。
調査からは、若者の切り詰めた生活が垣間見えます。自家用車を所持しなければ不便だと思われていた札幌市では、車を持たない若者が増えていることが分かり、生計費から自動車維持費などをカットしました。
大きなかい離
こうして算出した各地の最低生計費は、年額253万〜301万円(平均274万円)となります。厚労省が長時間労働是正のための目標とする年1800時間労働にあわせ、月150時間労働で生活するには、時給1407〜1677円(平均1523円)が必要になります。
現在の最賃は、人口を加味した全国加重平均で798円。最高額の東京都でも907円、最低額の沖縄など4県では693円です。最低生計費とは大きなかい離があります。
最賃が低く抑えられている地域でも、自家用車が必需品となるため、生計費が高くなる傾向があり、最賃に地域間格差をつけることは不合理です。最賃の低い地域では人口流出が起こり、地方の存続が脅かされる深刻な問題になっています。
今月末には、中賃審で最賃引き上げの目安が出される見込みです。賃金は生活費にもとづいて決定するという生計費原則にのっとって、最賃のかつてない大幅引き上げと全国一律最賃制の確立にむけた世論を広げることが重要になっています。(田代正則)
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