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2016年7月31日(日)

主張

年金5兆円運用損

老後の安心を危険にさらした

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 公的年金の積立金の2015年度の運用で5兆3098億円もの赤字を出したことを、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が正式発表しました。安倍晋三政権のもと、GPIFは14年秋から方針転換し、株運用を拡大してきました。その結果、株価の下落に直撃され大幅な運用損を出したものです。国民が支払う年金保険料などを原資とする積立金を、変動が著しい株運用につぎ込んだ責任は重大です。安倍政権は積立金の株運用拡大を積極的にすすめる方針です。老後の安心を保障する年金積立金を、より危険にさらすことは国民の願いに反します。

株運用拡大で損失広げる

 国民がこつこつ支払っている国民年金や厚生年金の保険料のうち、まだ年金給付に使われていない部分が年金の積立金です。原則20歳以上の国民に年金加入を義務付けている日本では、公的年金の積立金は、すべての国民にとって文字通り「共通の財産」です。それだけに総額約140兆円にのぼる積立金を管理・運用するGPIFは、国民生活の安心を支える年金財政の安定に貢献する責任と役割を果たすことこそ求められます。

 ところが安倍政権は14年10月、GPIFの運用方針を転換し、相場変動が大きい株式市場に大量の年金資金を投入することを可能にしました。「アベノミクス」の効果をアピールするため、年金積立金を株価買い支えの大きな手段にする思惑からです。それまで積立金のなかで国内外株の運用比率は24%だったのに、50%へ倍増させました。それとは逆に比較的安全とされる国内債券の比率は60%から35%へと引き下げました。

 今回発表されたGPIFの運用実績は、方針転換が、いかに積立金を不安定なリスクにおくものであったかを浮き彫りにしています。国内外の株運用は6兆7346億円もの赤字になりました。昨年後半からの株価下落が、大きな影響を与えたことは明らかです。円高傾向が続いたことで外国債券も赤字でした。比率を減らした国内債券だけ2兆円余の黒字でした。

 政府は「長期での評価を」などとして影響を小さくみせようとしていますが、方針を転換した直後の初めての年間運用実績で5兆円を超える巨額な損失を生んだことを深刻に受け止めるべきです。民間アナリストの試算などでは、英国の欧州連合(EU)離脱ショックなどの経済変動を受け16年4〜6月も5兆円の損失を出すとの見通しが伝えられています。株価中心の資産運用を長期化すればするほど、“傷口”をさらに広げかねません。

 国民は、将来の年金給付への影響にたいする不安を強めています。信頼される年金制度を確立するためにも、危うい「投機的運用」から手を引くことこそ必要です。

安倍政権の責任は重大

 例年7月初めまでに行われていた運用実績の発表が、今年は参院選投票後に先延ばされてきたことに、「安倍政権の損失隠し」という批判が広がっています。

 破綻が明白な「アベノミクス」の成果を演出するため、国民の大切な年金積立金を株運用に投じる安倍政権に、国民の暮らしも日本経済も任せることはできません。

 年金積立金は、「株投機」に使うのでなく、国民の年金受給権の安定的な保障のために最優先に活用することが求められます。


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