2016年8月19日(金)
原水爆禁止世界大会の到達点は核の傘依存を否定
安倍首相の「核先制不使用」反対
世界大会取材団 阿部活士
原水爆禁止2016年世界大会の取材団として、2日の国際会議から9日のナガサキデー集会まで広島と長崎を取材しました。もっとも非人道的な兵器である核兵器を禁止し、廃絶する条約についての実質的な議論が国連の舞台で始まったもとでの2016年世界大会。元国連軍縮問題担当のセルジオ・ドゥアルテ氏をはじめ、28カ国から100人近い海外代表と、草の根で活動する人たち(市民社会と訳される)が一堂に会しました。明るく、意気揚々とした発言の連続でした。感心するのは、被爆者の証言に耳を傾け、草の根の活動に拍手するトップリーダーの姿勢です。被爆国の政治家はどうあるべきなのか、わけても被爆国の首相の資格とはなにか、被爆国の運動の役割はなにか、を改めて考える機会でもありました。
日本政府の矛盾
なかでも、長崎の田上富久市長の「長崎平和宣言」は印象的です。田上市長は、「日本政府は、核兵器廃絶を訴えながらも、一方で核抑止力に依存する立場をとっています」とその「矛盾」をつき、「核抑止力に頼らない安全保障の枠組み」の検討を求めました。
今回、「核兵器先制不使用宣言に反対する」と米側に伝えたと報じられた安倍晋三氏の言動は、この被爆地の願いに真っ向から反する被爆国の首相にあるまじき行為です。
しかし、世界大会の到達点は、核の傘に依存する立場そのものが否定されたのです。
国際会議で採択した国際会議宣言は、「米露英仏中の核保有五大国とこれに追随する日本など同盟国の姿勢が『核兵器のない世界』へのもっとも大きな障害である」ことも確認しました。
核保有国がしがみつく「核抑止力」論を、「『国益』を守るために、他国への核兵器の使用や威嚇を認める危険きわまりないもの」だと批判して、核兵器を「禁止し廃絶する条約の交渉開始と締結を求める世論と運動を強めることに全力をつくさなければならない」と呼びかけました。
今回の安倍氏の言動は、核の傘に依存する、その本性をあらわにしただけです。その卑怯(ひきょう)さ、狡猾(こうかつ)さを帯びた本性をしっかり見据えて、本腰を入れて「世論と運動を強める」ことです。
連帯で国を包囲
田上市長は、8日の世界大会・長崎の国際交流フォーラムに駆けつけ、次のように激励しました。
「核兵器をもつ国、依存している国と、そうでない国との意見の違いが鮮明になっています。これは前進してきたがゆえの壁です。国を核兵器をなくす方向で包囲していくことが大切です。一つひとつの声は小さくても連帯して大きな声にしていく必要があります」
行動で、運動で、日本をかえようとの若者の発言もありました。ヒバクシャ国際署名の推進委員会事務局のキャンペーンリーダー・林田光弘さんのスピーチです。
「日本政府はアメリカと一緒になって核兵器禁止条約の締結の足かせになっているのが現状です。しかし、わたしたちは、唯一の被爆国の市民として、世界に声を届けることができます。政府の態度を拒否した市民の運動として禁止条約を求めるその声を内外から高めることは日本政府を転換させると信じています」
8月の世界大会を出発点に、国連総会にむけた秋のたたかいが続くのです。